真昼の月 ［大／宮］

17 捨てられた犬 潤 ページ17

階段を上がりきると、不意に、頭をさわられた。

「こぶになってる(笑)痛い？」

そう笑いながら、俺の頭を撫でた和也のてを払いのけた。

「触んなよっ！」

「・・・ごめん。」

和美さんの、スキンシップは過剰だとは思っていたが、息子のこいつまでとは。

先が思いやられる(汗)

払われた手をさすりながら、ついてくるそいつは、道端に捨てられた犬みたいだ。

「・・・お前の部屋。」

戸を開けてやると、悲しそうに、手をさすっていた和也は、目を見開いて、驚いていた。

「・・・こんな広いの？うちのアパートくらいあるよ？」

はぁ〜。本気で貧乏人じゃねぇか。

部屋の中で、クルクル回り
物珍しそうに見ている。

マジ、犬たな。

「じゃあ、後は自分で何とかしろよ？」

そう言って出ていこうとしたら、犬の耳が急にたれた。(汗)

「・・・うん。ありがとう。」

行かないで。置いてかないで。目がそう訴えてやがる。
はぁ〜。犬の癖に。

めんどくさいやつだ。

「・・・智のとこ、行ってみるか？」

何気なく、そう言ってしまった。

犬は、耳をピンとたて、しっぽを振り、

「うん！」

と、駆け寄って来やがった。

ほんと、めんどくさいやつだ。

無言で、庭に建ててある、智のアトリエに向かった。
後ろでは、小走りに俺のあとをついてくる和也は、わぁ。綺麗。わぁ。凄い。と、うるさかった。

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