あげない50 ページ6
無言を決め込んだ私。
凛月君はぽつりと話し始めた。
「ま〜くんが、昔人1の歌を勧めたんだけど、」
「俺、最初は面倒くさくて、聴くの断った、」
「うん」
凛月君は下を向いたまま顔を上げない。
「でも、あまりにも聴いてみろってま〜くんうるさくて、」
「うん」
「後から一回聴いた」
「うん」
凛月君の言葉にただ相槌をうっていく。
「今でもその歌と声、俺、覚えてて、」
「うん」
「二回だけ、A、俺の前で歌ってくれたことあったでしょ。そのあとはいくらせがんでも歌ってくれなかったけど」
「そうだね」
「音楽室でピアノは一緒に何回か弾いたけど、ギターも弾いてやってることあったけど、」
凛月君ともよく音楽室でピアノを弾いたなあ。
聴きあったり、連弾したりすっごい楽しかった。
でも……、
「でも、歌はなかった」
「うん、ないね」
今度こそ凛月君は顔を上げて私の目を真っ直ぐに見据える。
「俺、あの時の歌と声、まだ覚えてるよ、あれは間違いなく」
凛月君にそんな顔をさせてるのは私かな。
そんなに唇を噛まないで、血が滲んじゃうよ。
辛そうな顔をしないで。
「人1の声だった」
私は静かに目を伏せた。
「そうだね」
ひゅっと彼が息を呑む音がした。
「ねえ、」
伏せてた目を開けると凛月君の目が同じ高さにあった。
そのままぎゅっと服を掴まれる。
そうしてぐいっと凛月君の方に引き寄せられた。
ああ、私は今彼の腕の中にいる。
あんずちゃんに膝枕をせがんだり、抱きついたり、確かにこの子はそういう子だった。
ただ私はこういう風で凛月君に触れられたことは一度も無い。
だから戸惑ってしまった。
「凛月君?」
返事は返ってこなくて、腕の力だけがやや強まる。
「ねえ、凛月君どうし」
「Aは」
大きくはないが、私を遮るその声はやけにはっきりとしていた。
「人1として復活するAは、夢ノ咲学院からいなくなるの……?」
表情は私の肩に顔が埋められているせいで伺うことが出来ない。
ただ、その分、やけに寂しそうな声が耳に響いた。
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ゆうくんのストーカーのストーカー - す、すごいとこで止めるじゃねぇですか...面白いです!更新頑張ってください!無理の無い程度で良いので! (2018年4月8日 6時) (レス) id: c392d9b03c (このIDを非表示/違反報告)
凖様大好き - 面白かったです!続き待ってます。 頑張ってください! (2017年8月4日 14時) (レス) id: 3dc5b5c194 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しらうお。 | 作成日時:2017年3月21日 0時