あげない63 ページ20
「今は楽しめてますよ、音楽も、生活も。でも変化が怖くて、何か環境に大きな変化があったら、またどうしたらいいのかわかんなくなりそうで……」
「歌うのは嫌いじゃないし、むしろ大好きなんです」
布団を思わずぎゅっと握りしめる。
そうだ、進めないのは弱い自分のせいなんだ。
「お前……」
ぽつりとつぶやく佐賀美先輩。
「敬語しっかり使えるようになったな……」
「は……」
唖然とする私。
「いやー、お前の昔を思うとよくここまで成長したなあと。学院で他人のフリしながら話してた時も思ったんだけどな」
「人が真面目に話してるのにあんたって人は!ふざけないでください!」
思いっきり言い切った後、そっぽを向く。
反対側からは笑い声が聞こえてきた。
「くくっ」
「何で笑うんですか!」
そう言って振り返ったら笑い声はさらに大きくなる。
なんなんだこの人は。
「しんみりしてるより、おとなしすぎるより、少し軽口が叩けるくらいのお前のほうがやっぱり俺はいいな」
ひとしきり笑った後にそう言った先輩は私の頭にぽんと手を置いた。
「歌うの好きなんだろ?だったらやればいい。お前は十分強くなった。支えてやれる奴だって守ってやれる奴だって今のお前にはたくさんいる」
「お前の歌を待ってる奴だってたくさんいるんだ」
「学院の奴だってお前のことが大好きだ。お前がほんとにつらいとき、お前を笑顔にしてくれるやつはたくさんいる」
おかれていた手は私の頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でた。
「わっ、ちょっと!髪ぼさぼさになります!」
「寝てたんだから大して変わんねえよ」
また笑う。
ほんとに昔からよく笑う人だ。
「若いんだからまだまだやれる、何回だってやり直せる。だから、もう一回立ち上がってみろ」
な?と私の顔をのぞき込んできた。
社長が恩人なら、この人は救世主だ。
私の心をいつも助けてくれる。
「……ありがとうございます」
なんだか素直にお礼が言うのが気恥ずかしくて、少し目を逸らして言った。
先輩はにやにやしてた気がする。
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ゆうくんのストーカーのストーカー - す、すごいとこで止めるじゃねぇですか...面白いです!更新頑張ってください!無理の無い程度で良いので! (2018年4月8日 6時) (レス) id: c392d9b03c (このIDを非表示/違反報告)
凖様大好き - 面白かったです!続き待ってます。 頑張ってください! (2017年8月4日 14時) (レス) id: 3dc5b5c194 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しらうお。 | 作成日時:2017年3月21日 0時