あげない57 ページ14
透き通るような声。
ただ、それはあまりにも儚くて、寂しそうで。
でも、きれいな歌だ、と零はそれしか感じることができず声をかけるのも忘れていた。
一つ、一つ、音が大切に紡がれていく。
一曲ちょうど終わったところでやっと零は我に返り、一歩足を中に踏み入れ、開けっ放しだった扉を閉めた。
その音にAははっとして後ろを振り向く。
零にはAが焦ってひゅっと小さくのどを鳴らしたように見えた。
「ああ、零君。お邪魔してました」と言う表情もどこか硬い。
それを零は見逃さなかった。
「遅いんだね、帰り」
「それを取りに来たんじゃよ」
Aは驚いた顔をした。
「え!?これ零君のなの!?じゃあ、アコギも弾けるの?」
「そんなに驚かれるとはのう」
零はくくくと喉をならして笑った。
「まあ少しじゃがのう、家にあったから試しに持ってきてみたんじゃ」
「今度聴いてみたい、零君のアコギ。ていうか零君が楽器弾くとこ見てみたい。バイオリンも弾けるんでしょ?」
晃牙君に聞いたよーと言いながら彼女はぽろんぽろんと弦を弾く。
途中ではっとして、楽器を零へと渡しに歩み寄った。
「ごめんね、これ取りに来たんだよね?ありがとう、楽しかった」
「それならよかったわい」
零は嬉しそうにほほ笑む。
「もう一回聞きたいんじゃが、」
言いかけて零はやめた。
Aはどこかぼーっとしていて、今の声が耳に入ってなさそうだったから。
よく見たら彼女の眼の下に隈ができている。
そして、なんだかやつれてる気がした。
「Aさん、大丈夫かの?」
「え、何が?」
彼女は一瞬はっとしたあと、小さく微笑んで首をかしげた。
「疲れておらんか?」
じっと少しだけ圧をかけるかのように零は尋ねたが、彼女にまったくその圧の効果はなく、大丈夫だとへらっと笑うだけだった。
「それじゃあ、もう帰らなきゃ」
そう言ってAは零を通り過ぎようとする。
零の隣に並んだその瞬間、彼女の体が大きく傾いた。
「っ?!」
咄嗟の反応で零が片腕で受け止める。
腕の中の彼女の瞼は閉じていた。
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ゆうくんのストーカーのストーカー - す、すごいとこで止めるじゃねぇですか...面白いです！更新頑張ってください！無理の無い程度で良いので！ (2018年4月8日 6時) (
レス) id: c392d9b03c (このIDを非表示/違反報告)
凖様大好き - 面白かったです！続き待ってます。 頑張ってください！ (2017年8月4日 14時) (レス) id: 3dc5b5c194 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しらうお。 | 作成日時：2017年3月21日 0時
