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……と、まあこんな具合で昨日から一晩中コイツの傷の治療に勤しんでいたわけだ。


 腹の傷口に至っては私のもてる限りの縫合の知識を駆使し、縫い上げた。

それが良かったのかどうかはわからない。 けれど、間違いなく青年、ソロモンの命は保証され、昨夜のように苦しげな表情は消えた。


 助かったのなら、良かった。


 だから後は早く目覚めて欲しい。 じゃないとどうしても安心できないし、眠れない。


「早く、起きて……」

 青年の横たえているベットにいすに座ったままの私も顎をのせ、ソロモンのすべすべな頬を指で突っついた。


 むにむにで柔らかいほっぺた。

一度だけのつもりだったのに、やめることが出来なくなってついついむにむにとつついてしまう。



「ぅ……ん」

 しかし、それが良かった。

ソロモンは呻き声を漏らして、むくりと起き上がったのだ。


「ここは、どこだ……?

ウーゴ? アルバ……?」


 私に気がついていない彼は、寝ぼけたような目をこすり不安げに周りを見渡した。

 そのあと扉に立てかけてある神杖に気づき、ベットから立ち上がろうとする。


「い……! ぅぐ……」


 しかし、ソロモンは腹を押さえてうずくまってしまった。 先程までの寝ぼけ顔は一瞬で消え失せ、整った顔が苦痛に歪められる。


 まぁ、当たり前だ。 あれだけの怪我をしておきながら急に動くからだ。


「まだ無理よ。 これ飲んで、落ち着いて」


 立ち上がり、ソロモンの体を支えて私はベットの隣に置いてあった痛み止めの薬湯を渡した。

彼は案外あっさり受け取って、薬湯を飲み干した。

不用心だな。 飲んでもらえなくても困ったが、ここまであっさり飲まれても逆に困る。 もし私が正教会の者で毒でも盛っていたとしたらどうするのか。


 …………正教会の人間っていうことは否定はできないけれど。



「……苦い」

 薬湯の入っていた陶器の茶碗を私に返した彼はそう言った。

確かにこの薬湯は苦くて、飲みにくい。

しかし、


「これ以上に強い痛み止めはないの。 ほら、もう痛まないでしょう。 我慢して」


 そう言って微笑めば、ソロモンは少しバツの悪そうな顔をした。


あ、なんだ。 コイツちょっと可愛い。

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アリサ(プロフ) - 彩星さん» で、できるかぎり更新していきます! (2014年10月29日 19時) (レス) id: 956d2a8dca (このIDを非表示/違反報告)
彩星 - だって面白い作品だからつい興奮してしまって、頑張ってください!毎日確認します! (2014年10月24日 23時) (レス) id: 0e7062ca6e (このIDを非表示/違反報告)
アリサ(プロフ) - 彩星さん» そ、そう言っていただけると、とても励みになります! (2014年10月21日 19時) (レス) id: 956d2a8dca (このIDを非表示/違反報告)
彩星 - やべー、続き気になります! (2014年10月16日 0時) (レス) id: 0e7062ca6e (このIDを非表示/違反報告)
アリサ(プロフ) - 憐(紅の瞳)さん» 頑張りたいと思います……! (2014年10月5日 10時) (レス) id: 956d2a8dca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アリサ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2014年7月25日 17時

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