第292話 2017・03・24手直し ページ13
Aside
何でこんなことになってるんだろうか。
どうして私が迷惑をかけているんだろうか。
王宮の医務室の真っ白だったシーツの上に横たわっている私は、掛布を口元まで引き上げた。
ただの商人の私が剰え王宮に出入りさせてもらってるのに、面倒事を持ち込むだなんて。
あのとき、エギーユさんの店でスラが『支配者』だとわかったとき、私が自分で制圧できていれば。いや、それ以前に私がスラを思い出していれば。
際限ない後悔だった。
何のために強くなりたかったの、私。
できることが涙を堪えるだけなんて圧倒的弱者のすること。惨めだ。情けない。いやだ。
そんな考えに苛まれながら、隣で眠るピスティさんのためにも声を殺す。
医務室に移動してから、私が足の手当てをしていただいていたのは二刻程前だ。自分はいつ眠ってしまったのだろうか。申し訳ない。
……自分が元凶だというのに。
短剣が刺さっていた足を上方へそっと動かしてみたが、痛みは消えていた。魔法が効かないと言っていたが、どんな薬をつけてくれたのだろうか。
足を横へずらし掛布を退けて寝台に掛けてみると、包帯が巻かれていて傷口の具合は目視できなかったが、そのまま床に足を下ろして立っても痛みがないということはこの短時間で治ったのか。少々不気味だ。
近くで鐘が時を知らせる。
音につられて顔を上げると、窓の外には紺色の空と市場が見えた。
……ふと、考えた。
A(―――――自分でどうにかできないだろうか)
そうだ…。
私がクトゥー・スラを討てばいいじゃないか…。まだ間に合う。
彼が一般的な体力しか持ち合わせていないことはよく知っている。先刻の魔法道具にさえ気をつければ……!
いや、待て。自分を過信すべきではないと国王様は仰っていた。そうだ。この通り敗北を喫している。
でも。
そうだ、店の様子も見てきたい。その序でに少し情報が拾うことができたら良しとしよう。
ちらり。
ピスティさんの横たわっている寝台に目をやる。…規則的な寝息が聞こえる。きっとかわいい寝顔が拝めることだろう。
それから、医務室全体。…丁度お医者様も出払っている。
A(ヤム姉さんもモルジアナちゃん達も、動くな、って言いますよね。かといってドアの向こうには誰かいるだろうし)
それに、これ以上心配をかけるわけにはいかない。
……よし。
決意した私は窓に足を引っ掛けて
A「……っ!?」
ぐらり。
体が傾いた。
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カルティ(プロフ) - 凛さん» 長らくお待たせしてます。凛さんのコメントに、本当に救われます…!凛さんに宛てる心づもりで書いていきたいです。どうぞ、今後もよろしくお願いします!! (2020年5月2日 18時) (レス) id: 8b553715eb (このIDを非表示/違反報告)
凛 - 更新ありがとうございます。このお話が大好きで、ずっと楽しみにしていたので、とても嬉しいです!続き楽しみに待っています。 (2020年4月26日 0時) (レス) id: 119aca1ca3 (このIDを非表示/違反報告)
カルティ(プロフ) - 幽さん» 幽さん、コメントありがとうございます。温かい言葉に支えていただき、今日更新に至りました。これからもお待ちいただけたら嬉しいです!これからもどうぞよしなに。 (2019年11月30日 18時) (レス) id: c008cc11a5 (このIDを非表示/違反報告)
カルティ(プロフ) - 夏澄さん» 夏澄さん、ありがとうございます!更新しました!!読みやすいと言っていただけて口が緩むのが抑えられません…!読みにくさを気にしてるので本当にうれしいです。今後もどうぞよしなに〜。 (2019年11月30日 18時) (レス) id: c008cc11a5 (このIDを非表示/違反報告)
カルティ(プロフ) - Msさん» Msさん、ありがとうございます!落ちは最後まで明かしませんので、どうぞこれからもよしなに。マスルールとももだもだできるといいなと思ってます(笑) (2019年11月30日 18時) (レス) id: c008cc11a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カルティ | 作成日時:2015年7月30日 19時