第四十九舞『靉靆な悠遠』 ページ49
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____全てが、一瞬だった。
けれど私には、とても長い時間の様に感じた。
彼は、酷く判り易い。
彼が此方に見せた笑顔も、何時もの様な笑顔では無く…
眉を八の字に歪ませ、上手く笑えて居ない様な笑顔だった。
私は国木田君の背から降りようとした。
けれど、頑なに私を降ろそうとはしない。
「よせ太宰、歩けもせんだろう!」
そう云い、国木田君は私を背に負ったまま、彼の元へ近付いた。
国木田君は漸く私を背から下ろし、肩を組む様に支えた。
目の前の巨大な氷の結晶。
その中に、アイザ君とその父親であるシンガーさんが居た。
早い所氷の中から助け出さなければ、命は無いだろう。
氷の結晶に触れる。
…しかし、触れても触れても、結晶が消える事は無い。
よくもまぁ、やってくれた物だよ。
「…」
私は、やけに赤く澄んだ氷の結晶を思い切り殴った。
ひび割れひとつ、入りはしない。
ただ…何回か殴って居ると、隣の彼が私の腕を掴んで止めた。
「太宰、お前は与謝野女医の治療を受けろ。アイザックは必ず連れて帰る。らしくも無い顔をするな」
____そんな顔を、いつの間にして居たのだろうか?
____
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「今日はもう動くンじゃあ無いよ」
太宰の腹部に、何時もより多い包帯が巻かれた。
点滴をされ、太宰は何とか一命を取り留める。
「いやぁ…済まないね。何時もお世話になって」
「本当さ。アンタは解剖出来ないから詰まンないよ」
太宰は笑顔で、「そりゃ申し訳ない」と太宰は云った。
「そういや、阿呆みたいに中継されて居るよ。『横浜連続爆破事件』の救世主の救出」
与謝野が医務室に端末を持って来て、太宰にその様子を見せた。
「救世主って、柄じゃ無いのにねぇ…彼」
見えたのは、
情報を得ようと、国木田に押し寄せる報道。
その度、国木田は
『今は仲間の救出が最優先なので、後日お応えします』
と、手短にあしらう。
時々、真紅の氷の中のアイザックを映したり等、慌ただしい現場が見て取れた。
氷漬けにされた二人の救出は、かなり難解なものだった。
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要注意異能力者___内務省異能特務課より
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - かれぇらいすさん» ほわ〜!!ありがとうございます!!二次創作ではどれも画像に規制がかかっており、誤字修正の際に申請通してない画像は全部消えてしまって、アッ…となりました…ヒィ...とても申し訳ないです…!あいざくんはこれからも描くので、何卒…ッ!!!! (2020年3月16日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
かれぇらいす - 久し振りに読み返してます!ところで第三十一舞のアイザ君のすんばらしいイラストはもう見れない感じですか…?私の端末だと写らない(?)のですが…(´・ω・`) (2020年3月16日 0時) (レス) id: c029fe2fa8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» わ〜!ありがとうございます!文スト自体が流血沙汰なので回避しきれない案件です! (2019年9月27日 15時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - χCielχさん» 第一章を読み切りました。アイザックさんも、厄介な過去をお持ちですね汗。根は、レイくんににていますね。細かいところは違いますが... 。少し休憩してから、続編を読んで、いきます。余談、シエルさんの、文スト、どうしても、流血沙汰に(苦笑)。 (2019年9月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 那佳さん» ぎえええ!?もしそうならとても嬉しいです(*´-`*) (2018年12月10日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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