第四十五舞『蹂躙する侮蔑』 ページ45
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音が響いた。
爆発の音。一気に血の気が引いたのが判った。
音のした方を見れば、灰色の煙が漂う光景。
「ハハハ!この街も終わりだ!俺は横浜の厄災に手を貸した!」
高笑いをする男の眉間に、アイザックは銃口を突き付けた。
「殺すのか?殺せないだろ!」
「殺せる」
男の言葉に即答したアイザックは、引き金に指を掛けた。
「最期に良い事教えてやるよ。あんたは厄災にはならない。俺に殺されて、消えるだけだ」
アイザックの表情は、怒りや絶望と云うよりかは、激しい軽蔑に等しかった。
「や…、辞めてくれ!俺は頼まれて…!」
先程と打って変わった態度に、アイザックは嗤って見せる。
「もう遅い、って云ったよな。そっくりそのまま返してやるよ」
男は身体を震わせ、目尻に涙を溜めた。
アイザックは慈悲の無い顔で、こう云った。
「バンッ!」
引き金は引かなかった。
だが、男は気絶していた。
アイザックは立ち上がり、ビルを飛び降りた。
この高さから落ちても平然として居られるのは、文字通りアイザックが人間離れしているからだ。
「…作動した時は…そうだ、作戦移行」
アイザックが落ち着いて云う。
すると、小規模な爆発がもう一つ起こる。
アイザックは爆発の方へと駆けた。
目の前に現れたのは人混み。
「離して下さい!煙の中に…!まだ娘が居るんです!!」
「落ち着いて!今見付けて来ますから!」
人混みを掻き分けて居る時に聞こえた、母親と消防の声。
周りには、サクリファイスの影響で未知の痛みを訴える人も居た。
「お願いします!あの煙で…娘と剥ぐれて…」
「俺が行く」
アイザックは、通りすがりに母親に呟いた。
「君、辞めるんだ!」
消防救助隊の男性に掴まれた腕を振り払った。
灰色の煙の中に突っ込む。
聞こえたのは小さく消え掛かった声。
耳の良いアイザックは、直ぐに少女を見付けた。
「おい!もう大丈夫だからしっかりしろよ!」
アイザックは、少女に声を掛けた。
「あなたは……?」
「如何でもいい。悪い…触るぞ!」
少女を持ち上げて横抱きし、煙の無い場所へと急いだ。
少女を助けても、各地で爆破が起こって居る事は変わらない。
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要注意異能力者___内務省異能特務課より
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - かれぇらいすさん» ほわ〜!!ありがとうございます!!二次創作ではどれも画像に規制がかかっており、誤字修正の際に申請通してない画像は全部消えてしまって、アッ…となりました…ヒィ...とても申し訳ないです…!あいざくんはこれからも描くので、何卒…ッ!!!! (2020年3月16日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
かれぇらいす - 久し振りに読み返してます!ところで第三十一舞のアイザ君のすんばらしいイラストはもう見れない感じですか…?私の端末だと写らない(?)のですが…(´・ω・`) (2020年3月16日 0時) (レス) id: c029fe2fa8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» わ〜!ありがとうございます!文スト自体が流血沙汰なので回避しきれない案件です! (2019年9月27日 15時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - χCielχさん» 第一章を読み切りました。アイザックさんも、厄介な過去をお持ちですね汗。根は、レイくんににていますね。細かいところは違いますが... 。少し休憩してから、続編を読んで、いきます。余談、シエルさんの、文スト、どうしても、流血沙汰に(苦笑)。 (2019年9月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 那佳さん» ぎえええ!?もしそうならとても嬉しいです(*´-`*) (2018年12月10日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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