死ぬより先に、どうか殺して呉れ。【文豪ストレイドッグス】

第二十三舞『黒き名手』 ページ23

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太宰に良い様に使われるアイザック。





不機嫌そうな顔で、ダーツ盤(ボード)の二米(メートル)離れた正面に立つ。





先程の黒髪の青年側の一投は、盤の中心の真下だった。





先攻を取るには、中心を狙わなければならない。






アイザックは目を閉じた。







＿＿＿＿必ず先攻を取って来てくれ給え！






判ってるよ。




それ以外、此処では俺の使い道は無いんだろ。





アイザックは目を開ける。





それからは一瞬だった。






アイザックの矢は高速で盤に刺さり、見事に中心を射抜いた。






アイザックは太宰に振り返り、どうだ！と云わんばかりの顔をしていた。





その光景を、太宰は見て居なかった。







「いや見ろよ！」






「ご免ご免、だって君が中心を射抜くのは知っていたからさ」






けらけらと笑う太宰に、我慢の限界が近付いて来る。






「あぁそうかよ、それはどうも」





腕を組んで太宰から顔を逸らした。






「所で、アイザ君も座ったら如何だい？立ちっ放しも疲れるでしょ？」





太宰が聞くと、アイザックは応えた。






「何が起こるか判らない。俺は立ってる」





「そうかい？」






太宰とアイザックの会話を遮る様に、五枚の札(カード)が渡された。





アイザックが太宰の手札を覗き込むと、五枚のマークが揃った
フラッシュ。





一戦目から勝てる。





アイザックが安堵した瞬間、







「一戦目は降りよう。私の負けだ」






確かに、普通に負けるより、パスをして負けた方がリスクが少ない。




だからと云い、勝てる手札で降りたと云う事は、何か考えが…。







「貴方達は…つ、強いと思う…でも、僕には勝てない…諦めて、欲しい…」






ふと、目の前の黒髪眼鏡の青年が小さな声を発した。





青年の手札はフルハウス。太宰の役より、一つ上の役だ。







「おや、そうかい？」






太宰は至って冷静に話している。






「せ、先攻を取られたのは驚いた…僕の従者は…ダーツが得意だから…」






「そりゃ、私の番犬も百発百中の男だからねぇ」






太宰が自慢気に話すと、太宰は頭に圧迫感を感じた。




アイザックが太宰の頭を鷲掴み、頭を潰せそうな握力で掴んで来たのだ。






「だ、れ、が、あんたの犬だ！調子乗んなよ呆気(ぼけ)！」





「あだだだ、痛い！痛いかな、凄く！」






命を賭けて居るとは思えない呑気さだ。







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要注意異能力者＿＿＿内務省異能特務課より

アイザック・バシェヴィス・シンガー：身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。

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