Necromance89 ページ39
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「その前に、お願いがあるんだ。太宰君」
そう口にしたのは…藤崎が左の手袋を外した時だった。素手を見られるのは矢張り慣れないが、一度素手を見られた太宰にならば、今更見られたって構わない。
「何だい」
太宰は落ち着いた口調で、何時も通りに藤崎に返す。藤崎と目を合わせた時には、既に藤崎は決意の表情をしていた。
「…『精神世界』は、俺の創り出す異能の一種でもある。だから、アイザック君が目覚めるまでは…絶対に俺に触れちゃいけない。万が一太宰君が俺に触れた途端…アイザック君に繋がる道が途絶える。判った?」
「…判った」
「うん、偉い」
露わになった左手で、太宰の頭を撫でてやる。普段なら、
「辞めてよ」と払われるのだが…太宰は俯いたまま黙って藤崎に撫でられて居た。
「あと…いずれ、アイザック君は記憶を書き残す。彼の記憶が記された
真剣に、何処かほんの僅か、切なげに。眠るアイザックを見詰めたまま云う。青年の寝顔に…目を細めた。
「それはいけない。それをすれば、アイザ君の記憶から、君という存在は…本当に無かった事になる」
「それで善いんだよ。全ては、彼が…前に進む為に。その為に、俺はこうして…ここまで生きて来た。頼む太宰君、これは俺の…全てを掛けた事だ」
思えば…藤崎は、意識のあるアイザックと一度会っただけで、それ以外はまるでアイザックを避けるようにしていた。口では会いたい等と云って居たが。
太宰も…これは予測していた事だ。
していたのに。…けれども、止められない。藤崎が決意した事を。
「わ、かった。判ったから」
「有難う、太宰君。……君の事、描けずに終わるだなんてね。
…少し離れてて」
今となれば…彼の変人さも、腹立つ様な態度も、全てが…。
藤崎の左手が、アイザックの額に触れた。ぶわ、とどこからともなく光が溢れる。縛って居た霊達が不安そうに藤崎を取り巻き、風を巻き起こす。
藤崎が着る灰色の外套が、ばさばさと音を立てる。太宰の方へ目をやると、珍しい顔が見れた。
「翔!私、君に____」
聴き遂げる事無く、藤崎の意識はそこで途切れる。
____行ってきます。
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何処かの誰かのノート
彼奴を必ず救う。絶対に。
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ekakisitemasu(プロフ) - 1番最後の何処かの誰かのノートの彼奴を必ず救う。絶対に。で大号泣しました、、、、 (2022年10月21日 23時) (レス) @page50 id: 583e2155f1 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - 天才 (2022年4月29日 13時) (レス) @page50 id: 1cfd8c976c (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ファイさん» ありがとうございます…!笑って泣けるような作品にしたくて書いておりました!こちらこそ埋もれていたであろうこの作品を見つけてくれてありがとうございます、とても嬉しいかぎりです…!!!本当にありがとうございました! (2021年11月27日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
ファイ - アッ……ヤバイ エッ俺の心臓無事?大丈夫?あ、好き 主様本当にこんな素晴らしい作品を書いてくださり有難う御座います大好きです応援してます大好きです。 最初見たとき大号泣してしまいました。 本当にこんな素晴らしい作品を書いてくださり有難う御座います神! (2021年11月16日 18時) (レス) @page50 id: 1f415ed449 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 白鳥さん» あわわ、ありがとうございます.......!是非に!!!!私も白鳥さんのような方に出会えて嬉しさの極みでございます…ありがとうございます.......!!! (2021年4月30日 17時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
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