Necromance80 穢れた追憶:伍 ページ30
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____然し通常の死神と違い、アルマには寿命がある。
残り十数年すれば、アルマは消えて仕舞うらしい。アルマの云う
『あの方』は、酷く申し訳無さそうにアルマに謝ったと云う。
少女は、自身が消えて仕舞う事など気にも留めて居なかった。
それ所か彼女は優しい。本当に死神なのかと疑う程。仮に爆発でも起きて、煙の中に人の子が取り残されて居たとしたら…真っ先に助けに行く様な死神。
「ねぇ」
藤崎が持つ筆が止まる。筆を置き、席を立つ。制服の懐中に手を突っ込んでアルマに近付くと、座る少女と目線を合わせる為に少しだけ屈み、少女の顔にずいっと自身の顔を寄せた。
至近距離の藤崎。高校二年生と云うまだまだ子供の年齢で…全てを見透かす様な、それで居て充分に色気の漂う顔付き。死神とは感情を持たないと聞くが、アルマは思わず頬を染めて顔を逸らした。これは……未成年の人の子の顔ではない。
「えい!」
先程の雰囲気とは裏腹に、無邪気な声がした。途端にアルマの頬に違和感。絵の具を付けられたのだ。赤色の絵の具を頬に付けられたアルマ。窓を鏡代わりにして見ると、大量に付けられて居た。
窓に映る自分の姿。その後ろで、桜髪の少年がけらけらと笑う。
「翔さん…!私怒りますよ!」
「あはは!今の君の顔自体が赤いから、赤い絵の具も目立たないよ!大丈夫大丈夫!」
「うう…!!」
アルマは悔しそうに頬を膨らませ、その辺に落ちて居た黒の絵の具を手に取る。蓋を開けて、仕返しに藤崎に向けてじりじりと近寄る。
「え…あ、アルマちゃん落ち着いて。これ制服って云うんだけど知ってる?知らない?なら教えよう!制服が無いと俺は学校に来れない!しかも黒は目立つなぁ〜!落ち着こうよ!話せばきっと判る!だって俺達 夜な夜な体を向かい合わせる仲じゃん!?」
「もう本当に貴方は…!変な言い方しないで下さい!!」
「えぇ?変な?ちょっ、待って駄目駄目!!駄目ーーーっ!!」
黒の絵の具が、制服にべちゃりと付着した。今でもその制服には、落ち切らなかった絵の具の染みが残って居る。捨てる事無く、その制服を取っておいてあった。
高校を卒業してからは、彼女に会う事が無くなってしまった。
先日…約十年越しに、霞んだ視界の中で…藤崎は彼女に出会った。藤崎が病院に運ばれたのは、勿論死神の少女のお蔭だろう。それが、『自分の寿命はまだである』と云える決定的証拠だった。
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何処かの誰かのノート
彼奴を必ず救う。絶対に。
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ekakisitemasu(プロフ) - 1番最後の何処かの誰かのノートの彼奴を必ず救う。絶対に。で大号泣しました、、、、 (2022年10月21日 23時) (レス) @page50 id: 583e2155f1 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - 天才 (2022年4月29日 13時) (レス) @page50 id: 1cfd8c976c (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ファイさん» ありがとうございます…!笑って泣けるような作品にしたくて書いておりました!こちらこそ埋もれていたであろうこの作品を見つけてくれてありがとうございます、とても嬉しいかぎりです…!!!本当にありがとうございました! (2021年11月27日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
ファイ - アッ……ヤバイ エッ俺の心臓無事?大丈夫?あ、好き 主様本当にこんな素晴らしい作品を書いてくださり有難う御座います大好きです応援してます大好きです。 最初見たとき大号泣してしまいました。 本当にこんな素晴らしい作品を書いてくださり有難う御座います神! (2021年11月16日 18時) (レス) @page50 id: 1f415ed449 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 白鳥さん» あわわ、ありがとうございます.......!是非に!!!!私も白鳥さんのような方に出会えて嬉しさの極みでございます…ありがとうございます.......!!! (2021年4月30日 17時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
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