Necromance57 ページ7
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退いて行った人の山。人混みだった場所から、漸く藤崎の姿が確認出来た。藤崎は早急に手袋を付け、霊達を閉じ込める。
ふらふらとする藤崎。様子が可笑しい。国木田が急いで駆け寄る。国木田の手が藤崎の肩に触れた途端、桜髪の男はフッと倒れ込んだ。
驚いたが、倒れ込む藤崎を支えた国木田。善く見ると、藤崎の頬に血管が浮き出て、口から血を滲ませ、目からは血がボタボタと流れて居た。
「…離れて、国木田君。血が、付いちゃう…から」
「阿呆!そんな事は如何だって善い!待って居ろ、今与謝野さんに」
「駄目だ!」
藤崎は国木田の服をぎゅっと握りしめて、血を吐き出しながら叫んだ。腕を怪我した時と違って、かなり重症だ。死に際である。
「軽傷なら…まだしも。何、度も、何度も…死に際を繰り返す俺は、彼女の…厭な記憶と、重なる…これ以上は、駄目だ。大丈夫。病院に、行けばいい…」
ぱたぱたと床に滴り落ちて行く鮮血。如何考えても、病院まで間に合わない。
「…もし間に合わなかったら、俺に何かあれば、アイザック君を、頼んでも…善いかな。困ったら、彼の『ピアス』を調べてくれ。太宰君が判る」
今までに無い位に真剣な顔付きで云う藤崎に押され、思わず
「判った」と口にしてしまいそうになった。そんな時。
カツンと、ヒールの高い音がひとつ鳴り響いたと思えば、破裂した内臓の痛みも、呼吸の苦しさも全て無くなった。嗚呼また、彼女に厭な思いをさせてしまった。
「…本ッ当、莫迦な男だねェ。何アンタが引き摺ってるンだい」
与謝野が手を腰に当て、呆れ顔で藤崎を見ていた。先程死を決意して、最期にアイザックを託した感のあった自分が恥ずかしい。
「…引き摺るよ、俺も森さんに協力した。不死に、興味は無いけど…でも」
国木田が、子供の様に言い訳をする藤崎の胸ぐらを掴み、眼鏡を白く反射させてこう云い放つ。
「でもでは無い!先ずは礼を云わんか!貴様!!死ぬ所だっただろうが!!」
国木田は怒りの表情で、藤崎を怒鳴りつける。自分が死にそうな事をして、怒鳴られた事が…何だか嬉しくて…へらりと笑ってしまった。
「いやあ…ごめんごめん!有難うあきちゃん。…何時も悪いね」
「妾は…目の前の命を助けたいだけだ」
「君は…変わらず優しいね。そう云う所、好きだよ」
「やめな気色悪い」
背を向けられ、やれやれと溜め息を吐いた藤崎。一体何を見せられて居る?国木田はそう思った。
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何処かの誰かのノート
彼奴を必ず救う。絶対に。
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ekakisitemasu(プロフ) - 1番最後の何処かの誰かのノートの彼奴を必ず救う。絶対に。で大号泣しました、、、、 (2022年10月21日 23時) (レス) @page50 id: 583e2155f1 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - 天才 (2022年4月29日 13時) (レス) @page50 id: 1cfd8c976c (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ファイさん» ありがとうございます…!笑って泣けるような作品にしたくて書いておりました!こちらこそ埋もれていたであろうこの作品を見つけてくれてありがとうございます、とても嬉しいかぎりです…!!!本当にありがとうございました! (2021年11月27日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
ファイ - アッ……ヤバイ エッ俺の心臓無事?大丈夫?あ、好き 主様本当にこんな素晴らしい作品を書いてくださり有難う御座います大好きです応援してます大好きです。 最初見たとき大号泣してしまいました。 本当にこんな素晴らしい作品を書いてくださり有難う御座います神! (2021年11月16日 18時) (レス) @page50 id: 1f415ed449 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 白鳥さん» あわわ、ありがとうございます.......!是非に!!!!私も白鳥さんのような方に出会えて嬉しさの極みでございます…ありがとうございます.......!!! (2021年4月30日 17時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
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