Necromance91 ページ41
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キン、と。空間を裂く様な金属音。共にカランと物が落ちる音。藤崎が降り下ろした短刀と真紅の氷。勝ったのは真紅の氷だった。短刀の刃が折れてしまったのだ。
その衝撃で手を傷め、「…っつ、」と呟き、顔を歪めて左手を摩る。
「流石は代償の氷…代償は君の『意志』だね。アイザック君。
全く。何時までも眠ってると画材にしちゃうんだからね」
折れた刃を拾う。それを強く握り、再び真紅の氷に振り翳す。
何度も何度も。手が切れ、血が滴る。藤崎の手はぼろぼろなのに対し、真紅の氷は少し削れるだけ。割に合わない。
「…あの、街を…!救うのは…!俺じゃない!君だ!君だけだ!皆君を待ってる!だから…早く!これは俺の、あの日の、せめてもの償いだ!!」
叫んでは振り翳しを繰り返す。『あの日』とは、藤崎が青年を『人では無くした日』。藤崎の声に、アイザックの指がぴくりと動く。しかし首はだらんとしたまま。掠れた小さな声だけが聞こえる。
「……出て、け」
アイザック自身、判って居るのだ。己の精神が創り出し、それを藤崎が具現化した、精神世界の創りを。
自分は存在してはならないと、父親と共に消える事を決意した
アイザック。その精神はとても暗く、深い深淵。異能に近いこの空間。アイザックと藤崎の特異点が作り出したと云えば…それが最もこの場所を表すには近い表現だ。そして、この場から抜け出せるのは一人のみ。或いは二人が沈む。
得るのは難しいが、失うのは容易だ。得る為には、代償が必要である。
「出てけ?はは、随分と生意気だなあ」
「…いい、から…さっさと」
ひやりと周囲の温度が下がる。途端に、真紅の地面で鋭利な氷が形成され、藤崎に向かって威嚇する様に突き刺さる。桜色の彼は避けず、そのまま真紅の氷の攻撃を受ける。ピュッ、と頬にそれが掠る。怖気る事無くアイザックを見詰めた。
「態と外したね?如何して?助けて欲しいって云ってる様にしか見えないよ。云われなくたってその心算だけど」
藤崎の言葉に、アイザックは拳を握る。身動きが出来ない為、殴って抵抗は出来ない。青年が歯を食いしばると…今度は真紅の氷の槍が一本、藤崎の腹部を貫通する。
精神世界とは云え、痛みは感じる。感じる筈なのだが、腹部を貫通しても尚離れない藤崎に、「執拗い…!」と二本目の氷の槍がまた貫通して刺さる。
自身の腹部に刺さる氷に手を添え、藤崎は優しく微笑む。
「…強情な所、も、変わって…ないね」
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何処かの誰かのノート
彼奴を必ず救う。絶対に。
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ekakisitemasu(プロフ) - 1番最後の何処かの誰かのノートの彼奴を必ず救う。絶対に。で大号泣しました、、、、 (2022年10月21日 23時) (レス) @page50 id: 583e2155f1 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - 天才 (2022年4月29日 13時) (レス) @page50 id: 1cfd8c976c (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ファイさん» ありがとうございます…!笑って泣けるような作品にしたくて書いておりました!こちらこそ埋もれていたであろうこの作品を見つけてくれてありがとうございます、とても嬉しいかぎりです…!!!本当にありがとうございました! (2021年11月27日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
ファイ - アッ……ヤバイ エッ俺の心臓無事?大丈夫?あ、好き 主様本当にこんな素晴らしい作品を書いてくださり有難う御座います大好きです応援してます大好きです。 最初見たとき大号泣してしまいました。 本当にこんな素晴らしい作品を書いてくださり有難う御座います神! (2021年11月16日 18時) (レス) @page50 id: 1f415ed449 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 白鳥さん» あわわ、ありがとうございます.......!是非に!!!!私も白鳥さんのような方に出会えて嬉しさの極みでございます…ありがとうございます.......!!! (2021年4月30日 17時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
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