Necromance4 ページ4
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裾の長い砂色の外套が海水を吸って、物凄く重量がある。藤崎はずるずると男を引き摺り、規則を守って海に返そうとした…その時。
ぎょろり。気を失って居た人間が目を覚ました。
その目は鳶色。間違い無く太宰だ。太宰が海に身を投げて、運が善いのか悪いのか、藤崎に釣り上げられた様だ。
「ぎゃああああーーー!!」
藤崎の悲鳴。そして連られ、
「うあああああーーー!?」
太宰の悲鳴。
真昼間から善い歳した男二人が、海沿いで絶叫。周囲の人の視線が冷たく刺さって痛い。お互いがお互いに美形で無ければとっくに通報でもされて居ただろう。
「はぁ…また助かったか。まあ善い。矢っ張り美女と心中しろってことだね。って、一寸君!引っ張らないで!何するんだい!」
「釣った魚は海に帰すんだよ、当たり前だろ!?俺はいい子だからね!!」
ばちり。此処で初めて、太宰と藤崎の目が会う。互いを認識した途端、両者は硬直。
「……太宰君?」
藤崎は直ぐに太宰を認識して口にしたが、太宰の方は藤崎をじっと見詰めたまま黙って居た。そしてぽつりと小さく声を発する。
「…翔、」
「こら。翔さんな、太宰君。七年前から云ってるだろ?」
と、藤崎は座り込んだままの太宰に手を差し伸べた。太宰はその手を借りようとはせず、自力で起き上がって汚れを払う。
太宰が立ち上がると、藤崎は目を丸めて酷く驚いた様子で居た。何時の間にか、身長を抜かれたのだ。それも差がかなりある。
大人びた太宰の顔を見て、更に言葉を失う。ただ見詰めて居ると、太宰の手が藤崎の肩にぽんと置かれた。
「うふふ、老けたねえ〜〜〜!!」
ばしんばしんと五歳下の若者に、慰められる様に肩を叩かれる。そして今度はぺしぺしと頭を叩かれる。
「あれ?縮んだ?翔
「三十路?三十路って何?ん?俺はまだ二十七歳何だけど本当何なのかなぁ死にたいのかな?」
藤崎は青筋を立てつつ、表情は満面の笑顔のままである。器用な男だ。
「え、死にたい死にたい!楽に死ねる方法教えて!」
「ははは、愚問だな太宰君!それは海に帰る事だ!さあさあ飛び込むんだ!」
藤崎は輝かしい笑顔で、太宰をぐいぐいと押す。
「溺れるのは多少苦しいからね…!却下!」
海に落ちまいと藤崎を押し返す太宰。まるで相撲だ。善い歳した男二人が海沿いで相撲。絵面的にも…もう限界点である。
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【要注意人物】
藤崎翔:年齢27歳。身長175cm。体重58kg。彼の詳細を公にすれば、街の均衡が乱れる可能性が大いにある為、詳細は厳重に保管、或いは消去済みである。
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χCielχ(プロフ) - 奏汰さん» ありがとうございます〜〜!!嬉しいです!!!! (2019年7月19日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
奏汰(プロフ) - めちゃくちゃ好きです。 (2019年7月17日 2時) (レス) id: d623967004 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» だめですねぇ笑笑←藤崎の方がいい匂いするらしいです( ˇωˇ )(煙草臭除けば) (2019年6月26日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - χCielχさん» わーい!いい匂いだ〜!素晴らしいなぁ〜!!みたいな感じで天に召されてくれませんかね、幽霊さんたち。……ダメですか?(´・ω・`) (2019年6月11日 0時) (レス) id: d74fa5c180 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» いい匂いになるだけですね!? (2019年6月2日 10時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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