君の世界に、意味を与えよう。Act2【文豪ストレイドッグス】

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太宰はレイから離れ、なぎ倒された木に寄り掛かる中原の方へ足を運んだ。


「…太宰。彼奴、異能が無ぇ空間を作る餓鬼だろ。異能無しじゃレイは只の…、手前が傍に居なくて如何すんだ」


「大丈夫、ブラッドさん(・・・・・・)だもの。それに彼らは兄妹だ。あの少女は敵組織の『心臓』だけれど、『脳』では無い。『脳』を倒すには…これが最善策だ」


隣で笑う太宰は、先程レイに向けて居た様な冷たい眼差しでは無く、何処か『頼っている』様な。太宰は座り込む中原に横目を向けて、「中也がへばってるからあ」と巫山戯て云う。


中原はそんな太宰の態度に青筋を立てるも、殴り掛かる気力が無い。






一方、レイは。



嘗ては仲睦まじかった兄妹の間に、亀裂が走って居た。一言も交わさない。お互いに立ち尽くす。



「……兄さん」



ぴく、とレイの身体が、少女の声に反応する。

少女＿＿＿＿エリオットは、横浜で初めてレイを見た時に思った。音楽の天才であり、何時も自分の前を行く憧れの人の首元に…重い鉄枷。鎖に囚われていた兄の姿は…エリオットにとって、かなり衝撃のある姿だった。


何事にも物怖じしない兄が、首の鎖を引かれただけで…飼い犬の様に云い聞かせられていた。



「…あたし、兄さんに会いたくて組織に入ったんだ」


草を踏み、徐にレイに近づいたエリオット。レイは逃げない。
その距離僅か数センチ。少女のスカァトの襞が風に揺れる。


つい先日迄は、レイを取り返そうと目論んだ。けれどもレイを見て思った。この先、レイは『隷属』する。何処に居ても。マフィアでも、米国の異能組織でも。


マフィアでは『隷属部隊』をレイの抑止力とし、米国の異能組織では妹である自分を人質に取り、必ずと云って善い程にレイの立場は変わらない。


望んで善いのなら、二人で、何処か…遠い場所で暮らしたい。然しエリオットは、組織から離れられない。エリオットにも『仲間』が居る。今は米国の拠点に居る『仲間』が。


裏切れば、『仲間』は殺されてしまう。レイと同じだ。けれど…少女は考えた。少女には『考える力』があった。



「あのね、兄さん。あたしの事＿＿＿＿」



エリオットが云い終わる前に、少女の小さな身体を…黒い円套がふわりと包んだ。レイがエリオットを抱き締めたのだ。



「できない。俺がまもる。おまえも、仲間も、みんなまもる。だからそんな事いうな、ぜったいにいうな」



ぎゅうっと強く締め付けて、そう誓った。


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ポートマフィア『隷属部隊』隷属者No.01

レイ・ブラッドベリ：音楽界の名家『ブラッドベリ』出身。血が足りて居れば下手に暴れる事は無い為、適度な血の供給を推奨する。＿＿＿＿隷属者No.01『所有者』＿＿＿＿太宰治。

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