君の世界に、意味を与えよう。Act2【文豪ストレイドッグス】

salvage８０ Their past ページ30

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＿＿＿＿夜は危険だからね。外に出てはいけないよ。怪物が出るから。


大丈夫。此処に伊吹の杭を置いておこう。






二世紀前の米国、羅府(ロサンゼルス)に…強力な力を持ち、夜に出現する怪物。『吸血鬼』の噂が立った。


女型の始祖の吸血鬼と、その配下の吸血鬼が一人。始祖の吸血鬼には、虜になった物があった。


音楽だ。何千年と生きて来た中で、あんなに美しい音を聴いたのは初めてだ。怪物までもを魅了する提琴を奏でたのは、音楽の名家『ブラッドベリ』と云うらしい。特に今の世代の長男は逸材だ。



ある日始祖は思う。この音を、未来永劫聴いて居たい。けれど人と云う物には必ずしも終わりがある。家系でさえも何れは終わる。



聴いて居たい。ずっとずっと。死んでしまうのは実に勿体無い。せめてあの少年だけでも。



考えるより先に動いた。始祖は配下の吸血鬼を連れて、深夜に
『ブラッドベリ』の邸宅に訪れた。少年に永遠を与える為に。



邸宅に居た警備や使用人は必要無い。殺した。両親も必要無い。あの少年さえ居れば善い。殺した。母親の悲鳴。嗚呼駄目じゃないか。少年が起きてしまう。



「始祖様。彼女は私(わたくし)が頂いても？」


「勝手にすると善い」



配下の吸血鬼が、一人の少女に目を付けた。始祖が狙う少年に似た少女。





「エルを離せ」



ふと声が聞こえた。始祖が狙って居た少年が起きたのだ。その手には剣の代わりに、構提琴を構えて。声は震えて居た。



「はは。駄目だ。提琴はお前の命だろう？少年」



始祖は一瞬で距離を詰め、少年の腕を取る。強い力で掴まれ、少年は提琴を落とした。



「お前は実に綺麗だね。髪も瞳も表情も綺麗なら、音楽も綺麗に奏でられるのかね」



女とは思えない程強い力。これは人では無い。鋭い牙を見て少年は思った。女の舌が首筋に這い、身体が硬直した。刹那、激痛。「ぅあ、」と声を漏らした少年。霞む視界の中で、見えるのは自分と同じ様に襲われる妹の姿。血の海に広がる両親。




＿＿＿＿力が、欲しい。此奴を、許さない。此奴に勝る力が欲しい。



云わずとも力は手に入った。少年は始祖により、始祖の力を受け継ぎ、『怪物』と化した。妹はどさりと倒れる。少年から現れる、薔薇色の瘴気。



少年の足元が圧力で軋む。思い出した様に『杭』を手に取る。



「うァアァアァァ！！！」少年は化け物の様に叫んだ。恨みを込めて。全てを込めて。『杭』を女の心臓に突き刺した。

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ポートマフィア『隷属部隊』隷属者No.01

レイ・ブラッドベリ：音楽界の名家『ブラッドベリ』出身。血が足りて居れば下手に暴れる事は無い為、適度な血の供給を推奨する。＿＿＿＿隷属者No.01『所有者』＿＿＿＿太宰治。

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