君の世界に、意味を与えよう。Act2【文豪ストレイドッグス】

salvage７７ ページ27

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ざぁ…と、重力になぎ倒された木々の葉が風に靡いてざわめく。穢れの無い純白の髪は レイの顔を隠し、レイの口元だけが見える。


レイが口を開くと、鋭く尖った犬歯が見えた。



「俺は、いのうりょくしゃだ」



レイは嘘が下手だ。そんなレイが、真っ直ぐ太宰を見詰めて云った。嘘は吐いて居ないと云う事だけは、太宰にも判る。



「…可笑しいのだよ。仮に君が『吸血鬼の力を宿す異能』
であるならば、本能もその一部。直接私の血を飲める訳が無い。普通の人間にとって血液は不味だ。…って、ねえ…レイ君、聞いてる？」


レイの方に視線を移すと、何やらレイは目をきらきらと輝かせ、屈んで地面を眺めて居た。



「あり……！」



沢山の蟻が一列に並んで居るのを、レイは真剣に見ていた。蟻がどんな物かは知って居たが…この目で見るのは初めてだった。「また始まった」と眉間を摘んで肩を落とした太宰。


レイは珍しい物を見るとそればかりに気を取られて仕舞う。それが欠点だ。中原の汚濁で、ある程度の敵は殲滅したが…。まだ残って居る。『彼女』が。


敵組織の要はあの少女だと云って過言では無い。




「こいつ、でかい…！」



と、レイが一匹の蟻に触れようとしたその時。




「レイく、」



太宰が気付いて云い終えるよりも早く、『何か』がレイを吹き飛ばした。蟻に夢中になって居たレイは、直撃を喰らう。遠くに飛ばされたレイ。その『何か』は、灰色のフードを被った少女。


少女は既に標的を変え、太宰の足元。レイがあれだけ飛ばされた攻撃を、太宰が喰らってしまえば如何なる。中原は汚濁の反動で、指一本動かない。



＿＿＿＿刹那、耳を劈(つんざ)く様な高音が聞こえた。例えるなら、耳鳴りの音量が何倍にもなって鼓膜を破きに来る様な音。余りの高音にビリビリと周りの空気が震え、連られて皮膚も震える。



…レイだ。レイが叫んだのだ。『遠吠え』と呼ばれる彼の咆哮。太宰も中原も少女も、反射的に耳を塞ぐ。


レイが叫ぶのを止めても、耳にはキンキンと音が激しく残って居る。故に周りの音が認識出来ない。



お返しだと云わんばかりに今度は、レイが敵の少女の前に瞬時に現れ、強烈な回し蹴りを炸裂させる。少女は咄嗟に腕で防御するも間に合わず。飛ばされて野原を転がる。



少女の顔を隠して居たフードが外れる。少女は深手を追い、地を踏みしめて立ち上がる。



その顔を見て思い出したのだろう。レイは暫くの間、呼吸を忘れて居た。


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ポートマフィア『隷属部隊』隷属者No.01

レイ・ブラッドベリ：音楽界の名家『ブラッドベリ』出身。血が足りて居れば下手に暴れる事は無い為、適度な血の供給を推奨する。＿＿＿＿隷属者No.01『所有者』＿＿＿＿太宰治。

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