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ここが海の中かと聞けば、肯定の声が返って来た。「ふぅん」と興味無さげに繕う。
それで、先刻から下らない話を女性に持ち掛ける。普段の生活の話とか、実は高跳びの選手だとか。
女性は青年に興味を持った様に青年の話を聞いているのだ。だが女性は、一向に北森と目を合わせようとしない。
「ねえお姉さん、如何して俺の事見ないの?」
「私の勝手よ」
目を合わせて話をしてくれなければ、効果が無い。はぁ…この女。少々腹ただしくなって来る。刺激を与えた筈だが、中々思い通りに行かないので気に食わない。
此処で初めて、青年の右手が女性の頬に触れた。
「こっち」
半ば強引に此方を向かせる。嗚呼、少し赤いな。にこりと青年は微笑んだ。
「…子供には、興味無いのよ」
云う割には目が泳いで居る。嘘が下手だ。先ずお前は先刻からちらちらと此方を見てる。気付いてるんだよ。
只、子供と云うのは聞き捨てならないな。
「……へえ?」
ぐいっ、と女性を引っ張って寝台に押し付ける。身動きが取れぬ様に女性の上に乗る。抵抗が無かったその女性。
「一寸…退きなさい」
「はぁ?興味無い振りしないでよね。ずっと待ってた癖にさあ」
おっと拙い。少し本性が出てしまった。また優しい笑顔を浮かべ直して、女性の太腿の辺りに軽く触れる。すると、
「…あは、こんな物騒なもの持って。怖いなあ」
北森が手にしたのは、麻酔針。女性の太腿に常備されている様だ。青年は麻酔針を見詰めて愉しそうに笑う。
「…それを私に刺す心算?」
北森は首を傾け、その麻酔針を遠くに投げ捨てた。これで信頼は得ただろう。この女性から見た北森は、『欲に眩むただの青年』だ。
「真逆ぁ、云ったでしょ?俺お姉さんに痛い事しないって。
でもなあ…折角お姉さんといいことしようとしたのに、左手拘束されてちゃ無理だな…ごめんね?」
北森は心底残念そうにして居た。今まで人との深い関わりを避ける為に演じて来た演技が、此処で生かされる。
女性は少したじろいだものの、胸の谷間からひとつの鍵を取り出した。何処に入れて居るんだとは思った。
「これで善いでしょう」
手錠から解放された。北森は自身の左手首を摩って、理性の無い欲に溺れた男の様な顔を演じる。
「ありがとう、お姉さん」
さぁ、此処からだろう。このタイプの女性は、焦らして、焦らして、焦らせばぽろりと吐く。
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【要】注意異能力者
北森鴻:十九歳。身長167cm、体重52kg。性格、異能力共に危険性があると判明。条件が揃えば、接触せずとも相手を手に掛ける事が可能な異能を持つ。
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抹茶ラテ - ふと見つけて読んでみたら凄く面白くてなかなか長文物を読まない私でも気づいたら完結の所まで!!会話文や文構成が上手で途中感動でついうるッと来てしまう場面もありました、、!このような素晴らしい小説を書いて下さりありがとうございます!!! (2022年12月23日 21時) (レス) @page50 id: c4a8adec94 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 九十九天斗さん» 久しぶりにここにきました!それ故に返信遅れてごめんなさい、見つけて下さりありがとうございます!!!!!面白いといっていただけて何よりです!! (2021年12月31日 2時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
九十九天斗(プロフ) - たまたま見つけて面白すぎてここまで読み進めてしまいました…!連載中に知りたかった… (2021年11月27日 0時) (レス) id: a6414a60a8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 永衣さん» お返事が遅くなり申し訳ありません!!ハワ…嬉しいですありがとうございます…作品を書いていて本当に良かったです!! (2021年10月14日 3時) (レス) @page46 id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
永衣(プロフ) - 連載していたころから読んでました。ふとした時に読みたくなって戻ってきます、いつ見ても最高です!本当にありがとうございます! (2021年9月13日 11時) (レス) id: d90c12946e (このIDを非表示/違反報告)
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