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「お姉さん何歳なの?」
北森が女性に歳を聞く。女性に歳を聞くなど紳士としてはあってはならない事だが、生憎北森は紳士ではない。
「二十五よ」
「へえ。大人の女性って感じ。綺麗だし」
先刻から北森はこの女性に「綺麗」だと云い続ける。まるで、この女性に興味でも持ったかの様に。
然し女性の方も手強く、「綺麗」だと云われ慣れて居る雰囲気だ。それで善い。北森はそれを探って居たのだ。
「あのさあ」
青年の声の音階が、一回り低くなった。ただの無邪気な青年では無いと看守の女性も悟っただろう。彼の顔を見れば。
青年の顔は先程までの可愛げのある無邪気な表情では無く、何処か甘くて魅惑的な…ひとりの『男』の表情。
青年の変貌。思わず息を飲んだ。
「俺ね、寂しいんだ」
青年はその表情のまま。女性の視線を此方に集中させる。視線も、意識さえも蛇の様に絡み付いて逃がしはしない。
出任せでも何でも、仕掛けるならば此処だ。
「最近は彼女も忙しくて、ぜーんぜん俺に構ってくれないの」
遠回しに人肌が恋しいと表現する。逃がすな。捕らえろ、絡めろ、突き刺せ。その脳髄に刺激を与えろ。
「お姉さん近くに来てよ、お話するだけ」
この女だけが、太宰救出の手掛かり。この獲物を逃して溜まるか。
ぽすぽすと寝台の白いシーツを叩いて、ここに来てと誘導する。
すると女性は立ち上がった。この部屋から出て行くか、此方に来るか。二択だ。何時もの様に笑って、此方に来いと強く念じる。
「……少しだけよ」
掛かった。
「やったあ」
女性が寝台に座り、また足を組む。北森と距離がかなり近い位置。だが北森もまだ手は出さない。
ここまで近い距離に来れば、後は力で強引に殴り蹴りでもすれば勝手に吐くだろうとは思っている。けれど、女性相手にそれは気が引ける。だが北森の中で、その案もあった事に変わりは無い。
「大丈夫だよ、俺お姉さんに痛い事しないから」
色の香りを感じさせる青年の声。
「あら。しないのね」
「え?されたい?」
「いいえ?」
本当かなあ?と、意地悪気な笑みを浮かべる。出来るなら何もせず穏便に済ませたい。この女次第だ。
見るからに経験豊富そうなこの女性。悟られてはいけないのが、自分が女性関係に疎いと云う事。女性には慣れているのだが。
直ぐに手を出せば、それこそ童貞だ。
「…ここは海の中?」
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【要】注意異能力者
北森鴻:十九歳。身長167cm、体重52kg。性格、異能力共に危険性があると判明。条件が揃えば、接触せずとも相手を手に掛ける事が可能な異能を持つ。
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抹茶ラテ - ふと見つけて読んでみたら凄く面白くてなかなか長文物を読まない私でも気づいたら完結の所まで!!会話文や文構成が上手で途中感動でついうるッと来てしまう場面もありました、、!このような素晴らしい小説を書いて下さりありがとうございます!!! (2022年12月23日 21時) (レス) @page50 id: c4a8adec94 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 九十九天斗さん» 久しぶりにここにきました!それ故に返信遅れてごめんなさい、見つけて下さりありがとうございます!!!!!面白いといっていただけて何よりです!! (2021年12月31日 2時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
九十九天斗(プロフ) - たまたま見つけて面白すぎてここまで読み進めてしまいました…!連載中に知りたかった… (2021年11月27日 0時) (レス) id: a6414a60a8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 永衣さん» お返事が遅くなり申し訳ありません!!ハワ…嬉しいですありがとうございます…作品を書いていて本当に良かったです!! (2021年10月14日 3時) (レス) @page46 id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
永衣(プロフ) - 連載していたころから読んでました。ふとした時に読みたくなって戻ってきます、いつ見ても最高です!本当にありがとうございます! (2021年9月13日 11時) (レス) id: d90c12946e (このIDを非表示/違反報告)
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