第八十九舞『打開しろ銷魂』 ページ39
_
乱歩を太宰に触れさせたが、乱歩は只の「睡眠状態」である為、如何やら異能力者本人に触れないと解除出来ないものだった。
乱歩を眠らせた異能力者本人は自主をし、刑務所に入ってしまったらしい。
他県に多発していた連続殺人事件の犯人だったと、国木田から報告があった。
乱歩がどの位で目が覚めるか、判った物じゃない。
「…国木田。大丈夫」
『何がだ!俺は刑務所の異能力者を引き摺り出しに行く!』
「それは時間が掛かる。…俺に、任せろ」
アイザックはプツッと通話を断ち切り、与謝野に端末を返した。
それと同時に、俯きながら与謝野にこう聞く。
「与謝野、太宰は病院に居るのか?何処の?」
「大きい病院だよ。確か彼処の」
アイザックは与謝野の腕を引き、近くにあった黒い車の中に強引に押し入れた。
「悪いな、案内してくれ」
この車は、街人が避難する時にエンジンキーを取らずそのままこの場に置いて去ったものだ。
「アンタねェ…これは」
「おい、飛ばすからちゃんとシートベルトしろよ。この車は後で返せばそれでいいだろ」
記憶が無くとも、二年もゴロツキをやっていればこういう思考が簡単に出来る。
ダン!とアクセルを踏み、青年の荒々しい高速運転が閑静な街を走った。
____
__
「____太宰…!」
アイザックが扉を開けて、深刻そうな顔で云った。
何時もなら「あれ、如何したの?真逆心配でもしたの?」何て
笑って話す太宰。
しかしそれも無く、窓の風からふわりと揺蕩う
太宰の黒髪が揺れて居ただけ。
閉ざした瞼と、長い睫毛。
「…ご、め…なさ、誰…誰だよ…!此奴を傷付けたのは…!!」
可笑しくなる精神。前にも感じた事がある気がした。血の契約は、まず主たる者を護る事が絶対である為、この様な精神状態に堕ちてしまう。
そんなアイザックの背中を、バシンと与謝野が叩いた。
「しッかりしなアイザック。此奴はしぶといから平気さ」
ふと太宰を見ると、不自然に握られた右の掌。
解く様にその掌を開いてやると、きらりと輝いた銀のピアス。
何故手に握られて居たかは知らないが、アイザックは今着けて
いる赤いピアスを外し、床に投げ捨てた。
「…太宰。俺が死ぬより先に、死んだら許さねぇからな」
アイザックは病院の窓から飛び降り、姿を消した。
_
要注意異能力者____内務省異能特務課より。
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
429人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» ありがとうございます!アイザックはしかも望んでない体質ですからね…!!実はこの異能兵器、考案した奴はシンガーじゃないんですよ…さて誰でしょう…??((激辛カレーは五分五分ですかね!!!?? (2019年10月1日 19時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アイザック編を、読み切りました。アイザックさんも、厄介な体質ですね汗。とんでもな異能兵器の発動で、冷や汗でしたが、なんで良かったです。余談、激辛カレー勝負の行方や、いかに!?(笑)。二人とも、口から火を吹くか!??。(笑) (2019年9月28日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - リアさん» ありがとうございました!カレーは…そうですね、二人とも1口目でギブしてそうです笑笑 (2019年7月16日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - カレーの勝敗気になりますwwとても面白かったです!(^^) (2019年7月4日 0時) (レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 翠柘榴さん» わーー!!ありがとうございます!見てくださったんですね…!!おっふ短気ゴリラアイザックがお世話になりました…((ひえええ勿体ないお言葉です、ありがとうございました!!!! (2019年5月23日 0時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ