死ぬより先に、どうか殺して呉れ。双【文豪ストレイドッグス】

第七十六舞『眼勢の管轄』 ページ26

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太宰の事もあり、無償に腹が立って居たのかも知れない。




先程太宰の事は国木田に電話をし、回収して貰った。




アイザックは一人でもこの辺りの地形を覚える為、この店に入ったのだ。






店自体の雰囲気は好きなのだが、あの煙草野郎の所為で全てが台無しだ。



面倒事が嫌いなアイザックだったが、憂さ晴らし低度に少し蹴りを入れたら、男はこの様だ。





一寸焦る。




もしかしたら俺、強いのかと。





アイザックは そう云う記憶すらも、教えられて居ないし覚えても居ない。







「おいあんた、平気か」





アイザックは、貧弱そうな男を見て云う。



その顔は、少し驚いた様に目を丸めたが、直ぐに不敵な笑みに戻った。





「…ええ、貴方が止めてくれたので」






次にアイザックは、自分が蹴飛ばした男に手を伸ばした。





「あんた情けねぇな…一寸 足でつついただけだろ」





「俺は知ってるぜ…お前、赤い氷の異能力者だろ…！」





男は蹴られた部位を押さえて、アイザックを侮辱する様に云った。



すると、一気に周りの視線がアイザックに向けられる。








「嘘…三ヶ月前の？」



「一時期赤い氷の異能力者の事しかやらなかった奴？」






何が何だか…アイザックは何も知らない。




あの冊には、そんな事は書いて居なかった。




今は只、自分の知らない自分に呑まれている様で…気持ちが悪くなる。




早くこの視線から逃れたくて、店を出ようと踵を返した。





しかし、その足取りは…手首に感じた違和感によって止められた。




アイザックの手首を、黒髪の男の細い手が掴んでいた。






「有難う御座いました。お陰で助かりました」






この視線の野次を追い払うように…澄んだ声で、周りに届く様に、この男は云った。




アイザックに向けられて居た視線は、黒髪の男の言葉で、全て
煙草の男に向けられた。







「何かお礼をさせて下さい。甘い物は好きですか？」





目元は変わらないが、口元を微笑ませて彼は云った。














「あんた…ありがとな。名前は？」






「…フョードル・ドストエフスキーです。お礼を云うのは、ぼくの方です」






ドストエフスキーと名乗った男は、白い帽子に黒い外套を羽織って居た。




この店の洋菓子を食べてみたかったアイザックは、ついついドストエフスキーのお言葉に甘えたのだ。








「俺は」







「アイザック。貴方の名前ですね？」








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要注意異能力者＿＿＿＿内務省異能特務課より。

アイザック・バシェヴィス・シンガー：身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。

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