第七十四舞『色褪せない忠誠』 ページ24
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「アイザ君。あの建物の五階にある喫茶所で、この辺りから南西の海を一望出来るよ」
アイザックは、太宰と二人で横浜の街を歩く。
太宰は五階建ての建物を指差していた。
アイザックには先ず、南西の海に近いこの辺りの地形を覚えて
欲しかった。
「…へぇ。また美味いもの食えるのか」
「食べられないからね?地形覚えるだけだからね?せめて紅茶
一杯だけだよ」
アイザックに食べ物をご馳走するとなれば止まらなくなる。太宰はそれを知っている為、念を押した。
太宰の様子に、アイザックは顔を顰めて顔を背けた。
「
アイザックの一寸は、一寸では無い。
ふと、太宰は顔を横に向けた。
あるものを一点に見詰めて居たのだ。
「…善い川だねえ」
太宰が見詰める方向を、アイザックも一緒に見る。
しかし、何が善いのか判らない。
何の変哲もない川だ。
「飛び込んで来れば善いんじゃねぇの?」
アイザックが冗談混じりに
アイザックは、太宰の趣好までも忘れて仕舞っている。
「善いのかい!?有難う!君って実に善い人だ!」
それからの太宰は速かった。
目を疑った。気温の寒いこの時期の川に飛び込みやがったのだ。
アイザックに有無を云わさず、高々と笑いながら。
「…は?」
ぶくぶくとした泡が無くなって来ると、今度は太宰の砂色の背中がぷかりと浮かんだ。
思考が停止した。
流石に判断力の長けるアイザックでも、こればかりは唖然とする他無い。
「莫迦かあんた!?」
流れの速い川。太宰はとっくに遠くへ流されて居た。
アイザックは駆け出し、遠くの太宰に追い着こうとする。
「野郎…!正気かよ!」
苛立った声を発し、それ以降はまるで獲物を追う様な姿勢で追い掛けた。
丁度真横に追い付いた所で、アイザックは思い切り飛び込んだ。
白い泡が邪魔で前が見えないが、かなり冷たい川。
水の中は本当に嫌いだ。得意の速度も生かせない。
闇雲に手を伸ばし、何とか服の一部を掴んだ。
「…ぶはッ!…は、げほっ…」
何故この男を必死に助けたのか、自分でも良く判らない。
河岸で膝を着き、息を切らして肩を震わせた。
後で殴ってやろうと、心に決めた。
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要注意異能力者____内務省異能特務課より。
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - やっさんさん» ありがとうございます!アイザックはしかも望んでない体質ですからね…!!実はこの異能兵器、考案した奴はシンガーじゃないんですよ…さて誰でしょう…??((激辛カレーは五分五分ですかね!!!?? (2019年10月1日 19時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アイザック編を、読み切りました。アイザックさんも、厄介な体質ですね汗。とんでもな異能兵器の発動で、冷や汗でしたが、なんで良かったです。余談、激辛カレー勝負の行方や、いかに!?(笑)。二人とも、口から火を吹くか!??。(笑) (2019年9月28日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - リアさん» ありがとうございました!カレーは…そうですね、二人とも1口目でギブしてそうです笑笑 (2019年7月16日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - カレーの勝敗気になりますwwとても面白かったです!(^^) (2019年7月4日 0時) (レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 翠柘榴さん» わーー!!ありがとうございます!見てくださったんですね…!!おっふ短気ゴリラアイザックがお世話になりました…((ひえええ勿体ないお言葉です、ありがとうございました!!!! (2019年5月23日 0時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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