Thirty-third. ページ34
叶う事なら、
耳を塞いでしまいたかった。
身を切るように名前を呼ぶ声が＿＿こんなに胸を締め付けるから。
目を閉じてしまいたかった。
切なげに、悲しげに、苦しげに。
眉を寄せる顔が＿＿痛くて堪らないから。
飴色の瞳が＿＿私を責めるから。
「ッ＿＿＿＿」
「＿＿ま、待って！！」
今度は私が走る番だった。
あの日、彼が私を救おうと必死に走ったように。
私が、走らなくてはいけなかった。
＿＿＿＿如何して？
＿＿＿＿私は、ただ、キスされただけ。
＿＿＿＿抵抗出来なかっただけじゃない。
＿＿＿＿それに
＿＿＿＿貴女の心を掴んだのは、誰？
分からない。
分からないけれど、走らなきゃいけない気がした。
その背を、掴まなきゃいけない気がした。
だって、彼は、何時も私の為に走るのだから。
私はいつだって、彼を追って走ったことは無いのだから。
彼が＿＿＿＿泣きそうなのだから。
「立原ッ」
「触んなッッッ！！！！」
「！」
それは、初めての経験だった。
私はその日初めて、拒絶されたのだ。
彼に。立原道造に。
いつだって私の手を引いていた、一番傍にいた人に。
気が狂いそうだった。
叫びたくなる衝動に駆られた。
恐ろしかった。
私の手を払う、骨ばった手が。
熱すぎる瞳の奥が。
「…＿＿もう、アンタの隣にいるのが、辛いんだ……アンタが、こうして、俺を、追ってしまうから……っアンタが、俺に優しくなんてするから！！」
痛かった。
刺さるように、痛かった。
辛い、そう言われるとは思わなかったから。
他でもない、彼に。
肩に食い込んだ指が痛い。
でもそれよりももっと、軋むように壊れそうな胸が痛い。
背中の無機質な硬い感触が、冷たくて、冷たくて。
上手く息ができないの。
如何して、こんなに私も苦しいの？
「俺はッ…マフィアなんだよ……っ！人の殺し方も、壊し方も教わった！だけど！……人に優しくする方法なんて、教えてもらえなかった……
＿＿＿＿人の、愛し方だって……ッ」
絞り出すように、か細い声だった。
「それが、それの何が……貴方をそんなに苦しめるの……っ？」
《 夢見たものは ひとつの愛 》
《ねがつたものは ひとつの愛 》
震える手が、私の両頬を包んだ。
震える瞳が、見覚えのある熱を灯した。
「アンタを、こんなに＿＿＿＿こんなに愛してるのに、今から俺はアンタを傷つけるよ。
それが、この世の何より俺には辛い」
傷んだ笑みで、彼は私の息を塞いだ。
私は、拒まなかった。
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一華 顕音(プロフ) - GALAXYさん» コメントありがとうございます！番外編が完成しましたので、良ければ呼んでください！ (2016年8月10日 21時) (
レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
あっぷるぱい猫系女子 - 此奴等が可愛すぎて大声上げて発狂しそうです (2016年8月6日 20時) (レス) id: 26e00e8d74 (このIDを非表示/違反報告)
華京院アリス - お久しぶりです。立原がいいぐあいに出てきますね！夢小説であんまり出てこないので新鮮です。あと、中也がだんだん惹かれていく感じがまたたまりません！改めて中也好きだなと思いました。文ストのなかで一番いい話ですよ！これからも更新頑張ってください！待ってます (2016年8月1日 15時) (レス) id: 0f9149ddd8 (このIDを非表示/違反報告)
蘭 - あぁぁぁぁぁぁぉぁあ！（歓喜）どっちも応援したい！ (2016年8月1日 10時) (レス) id: 53c8339ac2 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - ああああ（（（立原君に頑張ってほしいけど…やっぱへたれちゃんな中也君に頑張ってほしいです！！！！ (2016年8月1日 9時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一華 顕音 | 作成日時：2016年7月10日 23時
