2nd - thirty ページ34
彩side
『うん。分かってたよ。ずっと、前から。』
そう、だ。
みんなの方から何も聞かれなかったから、それに甘えていたの。
本当はずっと知ってたよ、ちゃんと、話さないといけないって。
でも怖かった。
ううん、今も怖い。
思い出したくない。
みんなに話すことで、嫌でも、あの辛かった日々を思い出してしまう。
もう1年以上もの前の話。
それでも、忘れられないでいる自分がいる。
私は自分が1番可愛いんだ、きっと。
だって、そうでしょう?
そうじゃなきゃ、こんなところまで逃げたりしない。
自分でも分かるくらいに震える手を抑えながら、みんなの方をちらりと見る。
驚いた顔、安堵の顔、真剣な顔。
みんなはきっと優しいから、話しても、分かりもしない同情なんてしない。
きっと、黙ってたことを怒ってくれて、
辛かったねって慰めてくれて、
もう大丈夫だよって、話してくれてありがとうって、
言ってくれるんだ。
本当に、怖がることなんて、何一つないはずなのに。
この手の震えは止まらない。
[黙ってて、ごめんね。]
このたったの一言さえも、出てこない。
「・・・アーヤ?」
ほら、何も話さないから。
みんなが心配してる。
なんで出てこないの?
たった一言。
たった一言でも言っちゃえば、
言葉なんて、
話なんて、
気持ちだって、
溢れるように出てくるのに。
なんで何も言えないの・・・?!
今までにないほどの緊張。
体がこわばって、胸が苦しくなって、息が詰まりそう。
「アーヤ、大丈夫・・・?!」
「おい?!落ち着いて、深呼吸しろ!」
ああ、みんなにも分かるくらい、酷い顔をしているようだ。
自分でも感じる。
汗が冷たくて、こんなにも息が詰まって、今にも倒れそうなのは、
心臓を押さえる手の力が強いせいなのか、それともただ単に胸が苦しいのか、わからない。
どうしよう・・・
ちゃんと話さなきゃいけない、のに、
今は息をするだけで精一杯。
「アーヤ、もういいよ、何も話さなくていいから!」
「落ち着いて、まずその手をほどいて・・・!」
黒木くんが私に近づいてくる。
『、、、や、めてっ!!』
私の手をどかそうとする手。
自分でも訳がわからず、振り払ってしまった。
どうしよう、こんなこと、望んでないのに、、、、どうすればいい・・・の?
息が苦してくて、その場にしゃがみ込む。
「アーヤッ!!!」
『さわら、ないで・・・!!』
どうしよう、息ができない・・・
ついに目眩までしてきた。
その時。
「____彩?」
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MARINO - 感動しました!続き頑張って下さい。楽しみに待ってます。 (2023年4月25日 20時) (レス) @page40 id: f3d979ddd0 (このIDを非表示/違反報告)
諸星 - 涙出ちゃった!めっちゃ面白いよ!更新頑張れ〜! (2023年4月5日 16時) (レス) @page40 id: b53e3a470f (このIDを非表示/違反報告)
月夜星 - とっても面白いです!続きが気になります!更新お願いします! (2022年7月28日 13時) (レス) @page40 id: ee3f97685f (このIDを非表示/違反報告)
カタツムリ - 面白いですよ〜。更新頑張ってほしいのですよ〜。 (2021年5月1日 21時) (レス) id: e32939ee0e (このIDを非表示/違反報告)
MadCat(プロフ) - aoiさん» ありがとうございます!そろそろ完結も見えてきたし、頑張ります!!! (2020年10月11日 22時) (レス) id: 91fa778ae4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:MadCat | 作成日時:2020年9月6日 17時