2nd - twenty - eight ページ32
彩side
「_______アーヤ/彩?」
なんでこんなことになっちゃうんだろう____________?
遡ること1時間前。
ピアノの伴走者になった私と指揮者になった小春ちゃん。
私達は放課後毎日、小春ちゃんの家で練習をしている。
最初は小春ちゃんにピアノを教えてもらうところから始まって、
前夜祭が3日後に迫る今、私のピアノも驚くほどに上達し、私達の息もピッタリ。
クラス全体の完成度も申し分ない。
今日も小春ちゃんの家で練習していて、今はその帰り。
いつもはバスで帰る道を、あまりにも空が綺麗なものだから歩いて帰っている。
ただ、空が綺麗だったから。
こんな、何気ない、小さな理由で、私の平和な日々が壊れてしまうなんて。
そらるさんたちとよく、待ち合わせで使う駅。
その駅前をちょうど通っていた、ただそれだけ。
本当に、ただそれだけだったはずなのに。
「______アーヤ・・・?」
『ーっ?!』
背後からふいに掛けられた、懐かしい呼び名。
アーヤ、なんてあだ名の人はこの世界に何十、何百万といるだろうに。
それなのに。
思わず振り返ってしまった。
「やっぱり、アーヤなんだな・・・!?アーヤ!!!」
すぐにはその言葉の意味を理解できなかった。
いや、理解できるほど頭が回る前に、私はその場から走り、逃げ出した。
だって。
振り返ってしまった。
見てしまった。
その呼び名を口にした、人物を。
2年も経っていないはずなのに、
懐かしくて胸が締まるほどに、私の心に刻まれている、彼らを。
それも全員が揃っていた。
まだ住んで間もない、歩き慣れてないこの街。
私は家までの一本道ではなく、闇雲に、ひたすらに、走った。
彼らが追いかけてくるのを背後で感じた。
必死に撒こうと、知らない小道に入り、角がある度に曲がった。
それでも、かつては探偵として、一緒に活動してきた仲間。
探偵というだけあって、どれだけ撒こうとしても撒ききれず、
ついに行き止まりにまで来てしまった。
来た道を戻ることはできない、曲がる道もない。
数秒で彼らは追いつき、私は振り返ることもできなかった。
「アーヤッ・・・!」
息が荒くても分かってしまうほどに、喜びに溢れた声。
もうどこへも逃げられない。
「アーヤ、話を・・・話だけでも、聞いてほしい!」
「こっち向いてくれ・・・!」
「ずっと探してたんだぜ?!」
「お願い、アーヤ・・・!」
「少しだけでいいから!」
「________________あのときの続きを、話したいんだ。」
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MARINO - 感動しました!続き頑張って下さい。楽しみに待ってます。 (2023年4月25日 20時) (レス) @page40 id: f3d979ddd0 (このIDを非表示/違反報告)
諸星 - 涙出ちゃった!めっちゃ面白いよ!更新頑張れ〜! (2023年4月5日 16時) (レス) @page40 id: b53e3a470f (このIDを非表示/違反報告)
月夜星 - とっても面白いです!続きが気になります!更新お願いします! (2022年7月28日 13時) (レス) @page40 id: ee3f97685f (このIDを非表示/違反報告)
カタツムリ - 面白いですよ〜。更新頑張ってほしいのですよ〜。 (2021年5月1日 21時) (レス) id: e32939ee0e (このIDを非表示/違反報告)
MadCat(プロフ) - aoiさん» ありがとうございます!そろそろ完結も見えてきたし、頑張ります!!! (2020年10月11日 22時) (レス) id: 91fa778ae4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:MadCat | 作成日時:2020年9月6日 17時