*ﾟ*金魚花火5*ﾟ* (ページ12)

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【１１２】side O ページ12

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頬に触れる風が、思いのほか冷たくて

ポケットに手を突っ込んだ状態で、さらに体を縮こませた。

必要以上に仰々しくなるのが嫌で、白の衣装は着たくなかったけれど

なければないで余計に寒いからパーカーの上に羽織っていた。

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月命日には、毎月。Aちゃんがお参りに来ているそこは

手入れもきちんと行き届いていて、比較的綺麗だった。

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智「コンニチハ」

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軽い挨拶に、軽く手を合わせて。線香の先から細く長く白い煙

ここは、和哉さんと志摩子ちゃんのお墓だった。

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智「色々めんどくさいよね、まったく」

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遺骨を移すには自治体の許可だとか、お寺の人の許可とか。そういう手続きが必要だという。

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交通事故によって死んだ、とされている2人は

代々の先祖が眠っている墓に入れてもらうことができなかった。

組長が許さなかったのだ。当然といえば当然、組から勝手に抜け出したわけだから

組長からすれば勘当したも同然だったのだろう。

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翔『遺言書にね、お二人のことも書いてあったんです』

智『2人の遺骨を先祖の墓に移す、か……。

じいさんらしい決断だよ、あの人は何だかんだで情の深い人だったから。

娘夫婦をあのままにしておくわけはないね』

翔『智にこの件は任せてもいいですか？』

智『そりゃ構わないよ、でもどうして俺に？』

翔『あの辺りのことは、智が一番詳しいでしょう？』

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誰かが近寄ってくる気配を感じて、振り向けば寺の住職がこっちに向かってくるところだった。

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「必要な書類を用意しましたので、あちらの事務所のほうへ来ていただけますか」

智「あ、はい」

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住職が歩く、その2歩ぐらい後ろをついていく。

この人も記憶にあるより歳を取ったな、と思っていたら住職が口を開いた。

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「久しぶりですね、貴方がここに来るのは」

智「……そうですね」

「もう10年以上経ちますかね。2人のために貴方があのお墓を購入して」

智「ここがいいと思ったんですよ……2人が、そして2人の小さな娘が平和に暮らしていたこの地に眠るのが

あの時は一番いいと、思ったんです」

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