三十二。 ページ36
始まりは、もう誰も覚えていない。
始まってから、何日経ったのかも覚えていない。
始まってからが、何より辛かったからだ。
＿＿ヨコハマ裏社会史上、最も死体が生産された八八日。
其の期間は、人の死など、唯の数字にすぎず。
其処に在る亡骸など、見慣れた物にすぎず。
死と云うものは、風が吹く様な、雨が降る様な。
そんな、一種の現象にしか過ぎなかった。
＿＿龍頭抗争。
其の期間を、人々はそう呼んだ。
＊＊＊
此れは、龍頭抗争の何日か目の、何処かの戦場でのこと。
何時の事か、何処で起きたか。
其れは沢山の戦闘の資料や記憶に埋もれ、誰にも判らない。
他もまた同じことだ。
「……一斉掃射、開始」
挙げていた腕を下ろし、左右に立つ者に合図をする。
そして、轟音が鳴り響く。
一列になって、短機関銃から弾丸を放ち続ける黒服の中心に立つのは、彼等より一回り年端も行かぬ少女だ。
見た目は13歳程。
包帯と黒の衣装で包まれた少女は、しかし此の部隊の指揮官である。
＿＿瑞香A。齢16。
目の前で敵が倒れていく。
瑞香は黙って見ていた。
しかし、見ていたのは敵であって、敵ではない。
包帯で隠れていない左目に写るのは、敵が倒れていく様子。
光など入っておらず、闇を見ていた。
「……止め」
通常の音量で掛けられた声だが、其れでも黒服達は射撃を瞬時に止めた。
轟音が少しの間だけ辺りに響いたが、其れも直ぐに聞こえなくなる。
聞こえるのは、他の戦場の音のみだ。
瑞香は、敵の死 体に向けて歩む。
そして一番手前にあった死 体の前で立ち止まると、静かに其れ等を見ていた。
そして、しゃがむ。
何か云いたげにしていたが、直ぐに立って、身を翻す。
肩に掛けた黒外套が、バサリと音を立てる。
そして、黒服達の元へ歩み寄る。
しかし止まることはなく、其の儘黒服達を通り過ぎた。
黒服達も身を翻し、瑞香の後ろに続く。
新たな潰滅を、新たな死を生む。
瑞香の瞳には、光は一切射していない。
闇を見つめ、闇の中で何かを探している様だった。
＿＿
一寸、書いてみたかった←
後は映画冒頭で終わりですね。
早いって？
他に何を書けば宜しいので？←ざけんな
……すみません。
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作者名：日之静海 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年9月13日 21時
