二十八。 ページ31
「ア゛ア゛ァァァ！！」
太宰と瑞香が着くと、中原は暴れ飛んでいた。
敵は残り十数人。
しかし、中原の至る所から血が流れていた。
「……太宰。後は私がやるから、お願い」
瑞香が狙撃銃を太宰に投げ渡し、代わりに短機関銃を構える。
瑞香は一発だけ空に向けて撃った。
其の音に、中原は反応した。
敵から、太宰と瑞香に標的を移す。
「ヴガア゛ァァァ！！」
中原は太宰に猛然と飛び向かう。
「中也、もう佳い。後はAがやるから。＿＿異能力『人間失格』」
太宰が中原の額に手を中る。
其の瞬間、中原の頬や腕に浮かんでいた模様が消え、瞳も正気に戻った。
其れを確認して、瑞香は瓦礫の陰に隠れる。
そして腕だけを出し、敵に中てていく。
数人倒すと、陰から勢い佳く飛び出し、銃を乱射した。
軈て、敵は凡て倒れる。
瑞香は周りを確認し、銃を一丁片付けた。
「……終わった」
「お疲れ様」
太宰は瑞香に微笑み掛ける。
瑞香も薄く笑みを返すと、中原に視線を送った。
中原は近くの瓦礫に凭れ、眠っていた。
無事の様である。
「……帰ろう」
瑞香は太宰に声を掛けた。
太宰はコクリと首肯くと、中原を背に抱えた。
「送るんだ」
瑞香が意外そうな声を出す。
「え、送らないと思っていたの？」
「うん」
瑞香は即答した。
其の様子に太宰は、地味に傷付いた様で、
「非道い……」
と呟いたのだった。
＊＊＊
「……と云うか、太宰も知っていたの？」
中原の隠れ家に入り乍ら、瑞香は太宰に訊ねる。
因みに鍵は使っていない。
瑞香が太宰の針金を借りて開けた。
知っていた、と云うのは中原の隠れ家の事だ。
隠れ家と云っても、普通のマンションだが。
「そう云うAは？」
「いざと云う時の為に調べておいた」
「……クラッキング？」
其の問いには答えず、瑞香は台所に立つ。
お互いに、察してはいるものの、口に出すことはしないらしい。
瑞香は冷蔵庫を問答無用で開けると、中から食材を取り出した。
そして手を洗い、料理を始める。
「え、送り届けるだけで佳いじゃあないか」
「佳いの。……野菜炒め完成」
瑞香はお皿に盛り付け、ラップを掛ける。
太宰は軽く目を見張った。
「え、早くない？」
其の問いにも答えず、瑞香は玄関まで歩いて行く。
チラリと太宰の方を見れば、太宰は意図を察したらしい。
其の儘、二人は去って行ったのだった。
＿＿
最後、雑でしたが御許し下さい。
突然軽いスランプに陥ったのです( ；∀；)
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作者名：日之静海 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年9月13日 21時
