二十七。 ページ30
しかし、尚も中原は闘い続ける。
瑞香は、耳を塞いだ反動で落ちた銃を拾い、太宰に視線を送る。
「どうする、太宰？」
しかし其の瞳は、既に先を見透かしている様だった。
「勿論、手は無いよ」
『はァ？！』
自信満々、と云った様子に、中原は苛立ちの声を上げる。
太宰はニヤ付いた笑みを浮かべていた。
「あるのは、たった一つだけだよ。……ねぇ、中也？」
『……アレか？』
中原が疑う様な声を上げる。
しかし其の声に、戸惑いはなかった。
あるのは、覚悟。
「選ぶのは中也だよ」
『……やってやるよ』
「大丈夫？」
『心配いらねェよ、瑞香。……太宰、任せたぞ』
其れだけ云うと、中原は闘うのを辞めた。
音が止む。
敵も闘うのを止め、逆に警戒を始めた。
其の様子をスコープ越しに見ていた瑞香は、スコープから目を離し、銃を下ろした。
太宰に視線を向ける。
「初めから、此の心算だったね」
「……何の事だい？」
太宰が笑みを浮かべ、首を傾げる。
「部隊編成をしなかった。其れでは敵を倒せないと判っていたから。結局は、此の手を使う事になる」
瑞香は中原に視線を向けた。
肉眼で見るには、其の姿は遠すぎた。
状況を伝えるのは、耳に着けた無線機だけだ。
『汝、陰鬱なる＿＿』
中原が唱え始める。
其の声には少し、緊張を含んでいた。
「ならば被害が少なく、合理的な選択をする。……其れが中原の、」
『＿＿目覚ますことなかれ』
「＿＿《汚濁》」
中原が唱え終えたと共に、絶叫が響く。
破壊音が再び、更に大きくなって鳴り始めた。
「……中原、大丈夫。頑張って」
瑞香が小さく呟いた。
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作者名：日之静海 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年9月13日 21時
