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二十五。 ページ28

時は子二つ時。
詰まり、23時半から24時の時間。
と或る建物の近くに、三つの影が在った。

「そろそろだよ」

一人は太宰治。
近くに積まれていた鉄パイプの山に座って、標的が集う建物を見ていた。

「ンな事判ってンだよ」

太宰の声に反応したのは、中原中也。
太宰の反対側に立ち、同様に建物を見ていた。

「作戦は、先刻の打ち合わせ通り」

太宰の横に座って、狙撃銃を抱えているのは、瑞香A。
此方も同様、建物を見ていた。

「相手組織は中々に規模が大きい」

「其れを、中原と私で殲滅させる」

瑞香が狙撃銃を構える。
カシャッと云う音が鳴り、瑞香は再び銃を下ろした。

「……太宰。佳く考えれば、手前何にもしなくねェか?」

「失礼だね。後方から指示を出すと云う、大事な役目があるじゃあないか」

「其の他は?」

瑞香が鋭く訊く。

しかし、太宰はニコニコと笑うだけだ。
瑞香は、はぁと溜息を吐いた。
中原はじとりとした目で、太宰を見ていた。

「……中原が主軸となって敵を殲滅」

瑞香が作戦の最終確認を始める。

「あァ」

中原は一言首肯く。

「太宰は、此の場から指揮をとる。よって、中原は先に建物を崩す必要がある」

「正解」

太宰は飄々とした態度で笑う。

「私は後方から此の銃で、敵を撃つ。主に逃げ出す敵を。そして太宰の警護。後半は、此方の銃を使って突撃。残り全部撃ち殺 す」

「真顔で怖ェ事云うなよ」

中原が、呆れを含んだ顔でツッコむ。

因みに、瑞香が持ってきた銃は三丁。
狙撃銃一丁、短機関銃二丁だった。

短機関銃はコート裏にあり、一緒に弾もあった。

「却説、もうそろそろだ」

太宰がポケットから無線機(インカム)を取り出し、瑞香に手渡す。
中原には投げ、片手で見事にキャッチした。

三人は、皆揃って耳に無線機を付けた。

「じゃあ行ってくる」

「行ってらっしゃい」

瑞香が手を小さく降り、中原を見送る。
中原は其れをチラリと見て、後ろ背に手を降り返した。

瑞香も狙撃銃構える。
スコープを覗く瞳には光が射していなかった。

「さあ、始まりだ」

暗い瞳と嗤いを浮かべ、太宰は告げる。
其の声と共に、建物は崩壊した。

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作者名:日之静海 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年9月13日 21時

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