・ ページ35
.
そのあと、透目のグループと分かれ、私たちは札幌市時計台へ到着した。
「おお…ドラマでよく見るやつだ」
「この前CMで見たところに私たちが…」
森ちゃんと佐藤ちゃんが大はしゃぎしているのを保護者役の五十嵐ちゃんが止めていた。
Aとてはしゃぎたいが百合と話をする。という目的が視界を遮り、なかなか気分が乗らない。
館内に足を踏み入れると内壁がうすい緑色なのにまず気がついた。
一階が大展示室ということで各々見て回る。
全員が時々、へー。と呟いて見せた。
______あれ、これってチャンスじゃない？
ふと気がついた。
百合と2人になるのに絶好のタイミングだと。
前は急げ。
Aは自然を装い、百合の元まで近づいた。
そんなAを見た百合は
「勉強になるね」
と一言だけ言ってくれた。
これは、もうないチャンスかもしれない。
そう思うと居ても立っても居られない。
『ね、ねぇ、百合』
ついに口を開いた。
周りには演出の如く人がいない。
これは天がくれたチャンスなのだとAは再確認した。
『百合って……さ…』
唾を飲む。
『ば、爆豪くんのこと、好きなの……？』
「………………！」
数秒経っても百合からは返事がない。
その数秒間、Aはいくつか考えた。
もしかしたら嘘だったんじゃないか。
百合はなんとも思ってなかったんじゃないか。
爆豪くんのことなどただの友人の彼氏という印象だったのではないか。
全部、返ってきて欲しい返事の理想を並べた。
無意識なのだが。
「……そんなわけないじゃん」
百合が酷く傷ついた様子で返事をした。
その表情を見た瞬間百合に対して罪悪感を覚えた。
_______ああ。
____________嘘だ。
百合がその場から退散しようとした時、
「ねぇー！2階行かない！？」
都合よく、五十嵐ちゃんが声をかけてきた。
百合が逃げるように、
「うん！行く行くー！！」
Aから離れた。
もう、先ほどまでの話をしたくないようだった。
でも、
「Aも早く！」
いつも通り百合は話しかけてくる。
___周りに、勘づかれたくない……の？
余計に胸が苦しくなりながら、
『うん、今行く』
ゆっくり返事を返した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 615人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おにぎり。
| 作成日時：2021年10月23日 11時
