そして私はまた、最低な朝を迎える (ページ43)

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決断ページ43

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※『』道枝

———１年後.

「えっ？長尾くんが？」

『そう、なんか社長の娘さんが長尾のことゴリ押しらしくて。断りきれなくて今度食事会？行くんやって。今の時代でもそんなんあるんやな〜』

「そう、なんだ…」

『まあでも社長に言われたら断れんよなぁ』

その社長の娘とやらは半年ほど前に中途採用で入ってきて。こんな時期に？と不思議だったけど話を聞けば社長の娘とな。
最近やたら長尾くんにベタベタしてるなと思ってたけどそういうことか。全て納得。

「案外話してみたら上手くいくかもよ？」

『あーでも、長尾彼女居るらしいで』

「…え？！」

『へ、そんな驚く？笑』

「いや、ごめんっそんな感じ全然しなかったから」

『確かに、会ったことはあらへんな〜』

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この1年、
過去の出来事には蓋をして過ごしてきた。
完全に忘れることはないけど、
少しずつ新しい思い出が出来ていくと、不思議と記憶も薄れていくもの

でも意識を向けてしまえば、そこに彼は居て
もちろん必要以上に関わることはもう無かったけど
それでも、時々交わる視線が熱くてその度に必死に自分を抑えていた。

「(彼女できたのか——)」

ずっと私が縛っていていいわけもないし
もちろん縛っていたつもりもないけど
何だろう、この喪失感は。

自分の中にある黒い感情に嫌気がさす
あの時、振り払って彼の手を取ることだって出来たのに、それをしなかったのは他の誰でもない私

私、なのに———

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家に帰り、引き出しを開けば
あの日残されたメモが露わになる。

「何、やってんだろ、」

1年も経つのに何も変わってない。
気持ちに蓋をしたところで、過去を消そうとしたところで、そんなの全く意味ないんだ。

スマホのメッセージアプリを開けば
だいぶ下に埋もれた【長尾くん】とのトーク履歴

Aこちらこそありがとう。ごめんね。
既読

あのメモを見て送った最後のメッセージ。
既読がついたあと、そのまま返事が来ることはなかった。

もうこのトーク履歴が使われることはないんだろう。
そう思いながら眺めていた深夜1時。

ポンっ

長尾久しぶりやな。遅い時間にごめん
俺、大阪行くことなりそうやわ。
納得いかへんのやけど、しゃーないよな

「えっ…？」

私は状況が理解できず暫く固まっていた

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