そして私はまた、最低な朝を迎える (ページ42)

今日:32 hit、昨日:6 hit、合計:95,304 hit

言わないでページ42

.

１日限定の恋人の時間はとっくに過ぎてるにも関わらず、どうしようもなく求め合った私達は、汗ばんだ身体を重ねたまま、呼吸を整えていた

このまま身体を寄せ合って一緒に眠れたら幸せなのかもしれない。でもお互いに何処かで分かっていた。朝が来てしまえば終わりにしないといけないと。

だからこそ、一晩中何度も何度も重なって、行き場のない気持ちをぶつけ合った

長尾「Aっ…」

行為の途中、彼が愛しそうに私の名前を呼ぶ。"先輩"が無くなっただけでこんなにもくすぐったい——

「な、に…っ」

長尾「俺っ…Aが…」

「だめ、言わない、で…」

長尾「なん、でなん…」

長尾くんが何を言おうとしたのかはすぐに分かって、それを遂に言われてしまったら、私のこの溢れ出してしまった気持ちに蓋が出来なくなる…

長尾「名前…呼んで…？」

「謙、杜」

長尾「もっと、、」

「謙杜っ、」

こんなの絶対におかしい。
きっと普通の人から見たら気持ち悪いとさえ感じるかもしれない——

でも、きっと
彼を受け入れたあの日から、ずっと私の中には何か違う感情が眠っていて、ただそれに私が気付いてなかっただけ。
本当に嫌なら拒否できたことも、流されてきていたのは本能は彼を求めてたからだったんだ——

この間に何度スマホが鳴ったのだろう。
きっと、相手はあの人しかいなくて、それは分かっていたのに気付かないフリをした私はまた自分の中の最低を更新していく…

・
・
・

・
・
・

あれだけ迎えたくなかった朝は無情にもやってきて
でも、気が付けば隣には長尾くんの姿はなかった
辺りを見回すと

【最高の思い出になった。ありがとう】

テーブルにメモ書きが１枚。
どんな思いでこれを書いたんだろうかと思ったら自然と涙が出てくる。

「私、何やってんだろ…」

スマホを見れば道枝くんからの着信とメッセージ。
私が好きになったはずの人は彼で。
道枝くんとなら自分らしく居られると思ってたのに、始まって間もないのに既に嘘だらけの私は、道枝くんの隣に相応しくなさすぎる…

でも。
自分で決めたこと。過去は過去。
大丈夫。やり直せる。

そう自分に言い聞かせる。

——でも、本当は誰が好きなの…？

心の中の自分にどんなに問いかけられても
私は答えない。

——本当は…

言わないで。聞かないで。それ以上は

.