冷静 ページ16
.
あの後、全く仕事が手につかなくなったかと思いきや、私は会議室を出た瞬間から意外と冷静だった。
すぐに化粧室に向かい、リップを塗り直す——
それは今起きたことをリセットするかのような、スイッチを切り替えるような、そんな感じだった
何事も無かったように始業して、いつものように道枝くんと仕事を進めていたとき…
道枝「先輩…大丈夫ですか？」
「えっ…？」
道枝「いや…なんか、ちょっと元気ない気しただけなんで、勘違いやったらすみません」
「ふっ…笑 道枝くんってエスパー？」
道枝「何となく、先輩のことなら分かるようになってきました」
「おお〜！」
指導係として道枝くんとペアを組んで半年。
お互いのことが少しずつわかってきて、最近はかなり息もあってきたように感じる
道枝「無理、せんでくださいね」
「うん、ありがとう」
道枝「絶対ですよ」
「心配性だね〜？笑 無理はしないし、もし私に何かあっても道枝くんもう1人で仕事出来ちゃうよ」
道枝「そういうんやなくて…俺が先輩居らんくなるの嫌なんで…」
誰かに必要とされる感覚は何だかくすぐったい。
照れ隠しに笑ってみせたけど、本当は凄く嬉しかった。
道枝「あの･･･」
「んー？」
道枝「あの、やっぱり先輩って大橋先輩と付き合ってるんですか･･･？」
「そう、見える？」
道枝「この前の歓迎会でそうなんかなぁって。」
「うん、そうだね、」
こんなこと聞いてどうするんだろう、
やっぱりそういうのって気になるもの？そう思いながら隣の道枝くんを見ると、表情を隠すように手で顔を覆っていた
「どうしたの…？」
道枝「なれたらええのに･･･」
「えっ･･･？」
道枝「大橋先輩になれたらええのに…そしたら無条件に先輩の隣に、居れるってことですよね？」
「何言って…」
道枝「でも、正反対やし…無理ですね」
「･･･道枝くんは道枝くんのままでいて…？誰にもなる必要ないよ」
作業の手を止めて放ったその一言は
自分でも驚くほどにすらすらと、躊躇無く出た言葉。
何も考えずに身体が勝手に発したような･･･
道枝「先輩」
「ごめん、何か今の気持ち悪いね」
道枝「好きです」
「えっ…？」
道枝「無理なのは分かってます。でも、やっぱり俺、先輩が好きです」
真っ直ぐ、私だけを見て発されたその言葉は
いつまでも私の頭に響いていた——
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 463人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「大橋和也」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：fumi
| 作成日時：2022年5月14日 21時
