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あれからどれくらい時間が経ったのか。
思わず握ってしまった手は何故か離してもらえなくて、
名前を呼んでも反応しない。
「･･･長尾くん、？」
長尾「･･･」
静かな会議室に2人きり。
こんなところ誰かに見られたら、私が連れ込んだみたいに思われるんだろうか——
「ほ、ほら。そろそろ始業時間だから、行こ？」
離してくれないのなら、いっそこのまま、私がここから連れ出せば良いか——そんなことを思い、扉まで歩いて行こうとするとそんな考えはあっさり打ち砕かれる
普段の彼からは想像も出来ない強い力でそのまま引き寄せられて、腕の中まであと一歩の距離
「ちょ、ほんとどうしちゃったの…？」
掴まれた手と反対の手で、その一歩の距離を縮められないように彼の胸元に手を置き、そっと押し返した
「ち、近いって…笑」
笑って誤魔化すのもちょっと無理のある雰囲気。でも、今自分が感じているこの動揺を隠すにはこうするしかなくて、そのまま横に視線を逸らす——
長尾「･･･こっち向いて」
ようやく口を開いたと思えば、低いトーンでさっきまで露わになっていた首元の
「･･･っ」
長尾「奪ってもええ？」
「奪う、って…」
言っている意味が分からなくて、そのまま視線を上に向ける。少しだけある身長差———私が見上げればもう、触れてしまいそうな距離感
私、長尾くんに何でこんなドキドキしてるの…？
いけない、自制しないと…だって私には…
長尾「今だけ、大橋先輩のこと忘れて」
「そんなこと、できな…っ」
有無を言わせず
私の言葉を唇で塞いだ彼はそっと流すように視線を落とし満足そうに笑う
あれ？どうして、こんな事になったんだろ———
「待っ、長、尾く…っ」
隙を与えないようになのか、間髪いれずに同じことを繰り返す彼と、何故か拒否できない私——
段々とお互いの呼吸が乱れ出して、その状況に酔ってしまって、もう何も考えられなくなった…
普通に考えれば最低なこと。なんてことは
すぐ分かる事なのに…
きっとこの時から全ての歯車は狂い出していて、
あくまで今日の出来事はきっかけに過ぎない——
長尾「リップ、崩れちゃいましたね…？」
「･･･っ」
不敵に笑う彼から目が離せない——
何かが崩れていく音がした
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作者名：fumi
| 作成日時：2022年5月14日 21時
