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早朝、白羊塔一階大広間前にて。
『……どうしよう、これってどういうテンションで参加するんだ?真面目な顔……した方が良いか、いやいつも真面目だけども。』
あちらこちらを彷徨きながらぶつぶつ独り言を話す女に向けられる視線はかなり冷たい。私だってあなた方のようにスマートに行動できるならしたいですよ。
あと20分程で朝の衆議が始まる、きっと今大広間に入っていったあの男たちは衆議に参加する者なのだろう。多分どこかの官だ、肝心のどこかは全く知らないけど。
私だって入室くらいできる、そんなの当たり前。問題なのは入室した直後の行動だ。
私は自分の立ち位置(精神)すら分からないのだ、そんな管理官に立ち位置(物理)が分かるわけないだろう。多分ここかな〜って立った所が実は王様専用の場所でしたとかなったら私は一生恥さらしだ。
なんでこんな時に限ってお仕事マシーンは通りがかってくれないんだよ……とドアに張り付いていると肩を叩かれる。うわ、怪しい挙動すぎたか……もしかして私つまみ出される?官なのに……?
「ね、ねえあなたどうしたの?見たところ文官よね、中に入らないの?」
振り返るとそこには何ともハレンチな格好をした美しい魔法使い、八人将のヤムライハ様が立っていた。全く私が言えた話では無いが食客の八人将様ともあろう御方がなんでこんな所に。
『ええと、はい、文官でございます。入りたいのですが、お恥ずかしながら、実は朝の衆議に参加するのは今日が初めてでして、色々困っているのです。表情とか立ち位置とか、……立ち位置とか。』
「えっ!じゃああなたがAちゃんなのね?!」
ジャーファルから話は聞いてるわよ!とにこやかに私の背を叩いてくるヤムライハ様。全く話についていけないまま硬直する私を見て彼女はクスクスと笑った。
まぁまず入って入って!と豪快に背を押されるまま私は大広間に転げこむ。ちなみに比喩表現ではなく本当にすっ転んだ。あの細腕のどこにそんな力が。
『ひ、広い。』
「ええ、広いわよ!」
私を起き上がらせると自慢げに胸を張る彼女。これはすごい、まさか白羊塔の一階はこうなっていただなんて。
思わず見とれていた私にヤムライハ様は「ほら、動いて」と呆れたように声をかけた。そして彼女は“Aちゃんの場所を案内する”と言って私の手を掴んで歩き出した。
「__はい、ここよ。」
『…………はい?』
__辿りついた場所、……なんか高い場所。
偉い人しか、立てなさそうな場所。
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あまね(プロフ) - すきだぁぁぁぁ (10月11日 21時) (レス) @page18 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - とても面白いです!これからも頑張ってください、応援してます!*\(`•ω•´)/* (2021年12月30日 12時) (レス) id: bdd88dda29 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳴々 | 作成日時:2021年9月15日 0時