6 ページ7
.
『おはようございますジャーファル様、衆議はどうされたんですか？』
朝から全く見に覚えの無いことで怒られるなんて最悪だ、と内心白目をむきながら脊髄で言葉を紡ぐ。咄嗟の返事の割にはトゲが少なくて安心、下手したら喧嘩腰になる所だった。
ついさっき鐘が鳴ったばかりだと言うのに、もしや衆議が終わってすぐにダッシュしたのだろうか？この政務官ならやり兼ねない、お小言戦隊のグリーン担当なのだから。うるさい上司は彼一人なので戦隊と呼べるかはかなり微妙だが。
「その言葉そっくりそのままお返ししますよ。あなた、朝の衆議はどうしたんですか？」
『……もしかして昨日その件話しに来てました？』
「ええ、少なくとも四回は話しました。」
や っ ち ま っ た 。
朝昼の疲労で眠気がピーク、加えて相手がジャーファルということもあって昨日の私は清々しいほど彼の話を聞いていなかった。
彼の事は好きではないがこればかりは本気で申し訳ないと思った。仕事を任せられている身である以上最低限のことは出来なきゃいけないのに。最悪だ、昨日の私を恨むしかない。
『……申し訳ありませんでした。全く話を聞いていませんでした。』
「そこは嘘でも“話は聞いていたけどうっかり忘れていた”と言いなさい。あなたって人は毎度変な方向に正直ですね、いつになったらその誠実さを私に向けてくれるんですか。」
正論パンチで心がズタズタになっていく。言い返したいが今回に限っては全面的に私が悪いので今は彼のサンドバッグになるしかない。
しおしおと干からびていく私を見兼ねて部下の一人が「A様は昨晩遅くまでお仕事をしておりましてっ」と助け船を出してくれる。すまない部下よ、悲しいかなジャーファルはその場に居たのだ。
「ハァ……。明日はしっかり来るように。」
ぴょぴょぴょ、と冷や汗を飛ばしながら縮こまる私の部下を見ていたたまれなくなったのか、大きくため息を吐くと私を睨んで彼は踵を返した。
「A、来なさい。あなたの仕事を取りに行きますよ。」
『渡しに来てくれるって言ってませんでしたっけ？』
「都合の良い所だけ聞けるだなんて随分良い耳を持っていますね。罰ですよ、罰。」
ガシッとそこそこ強い力で左耳をつままれ強制連行される。助けようとしてくれた部下がオロオロしていたので感謝の気持ちを込めて親指を立てておいた。現状は全くグーでは無いのだが。
左耳から伝わる冷たい温度に思わず身震いして、やっと私は真面目に歩き出したのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 84人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あまね(プロフ) - すきだぁぁぁぁ (10月11日 21時) (
レス) @page18 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - とても面白いです！これからも頑張ってください、応援してます！*\(`•ω•´)/* (2021年12月30日 12時) (レス) id: bdd88dda29 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鳴々 | 作成日時：2021年9月15日 0時
