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.(政務官視点)
ギィ、と閉まる扉を見届けると時刻は午後の9時、商館が盛り上がり始める時間帯だった。
こういう時間は守れるのだな、と内心溜め息をつきながら届けられた書類の最終点検をする。……ノーミスか、なんだかそれはそれで腹立たしい。
「ジャーファル様、お先に失礼致します。」
「ああ、はい。お疲れさまでした。」
ついに最後の部下も出て行ってしまった。堅物揃いで有名な政務官が聞いて呆れる。それに今出て行った部下に関しては入室してきたAに釘付けだった、男としての本能を隠そうともしないとは。
それにしてもいつもと違う服装の彼女には独特の雰囲気があった。バルバッド国民のような、と言うのが良いだろうか、布を複数枚腰に巻き付けていた。
女性らしい可憐さは無い、だが誰かを守ろうという強い意志を感じる__そんな雰囲気。
ふと、コンコン、と叩かれた扉に返事をすると、悪巧み中の顔をした我が王が顔を覗かせる。
……とても嫌な予感がする。できれば一生要件を聞きたくないがこの人は私が黙ってても勝手に喋り倒す、無駄な抵抗はやめよう。
「どうしま」
「商館に行くぞ、ジャーファル。」
「……せめて最後まで言わせて貰えませんかね。私は仕事があるので行きませんよ。」
そんな事は関係ない!と駄々をこねだす大男に思わず白目を剥きそうになる。何もシンが一人で行けば良いのだ、私まで着いていく必要はない。
「どうしても行きたくないのか?」
「行きたくても行けないんですよ、先程も言った通り仕事が終わっていないので」
「ほう。行きたくても、か」
「……違いますからね。」
ニヤニヤとこちらを見やる王、こうなった彼は私が折れるまで引かないのを私は知っていた。
「……一周です、一周見回りしたら私は帰りますから。」
「はっはっは、お前も素直じゃないな」
__つまり行く選択をしたのもシンのせい。何か見たい物や会いたい人が居るわけではない。断じてそんなことはない。
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あまね(プロフ) - すきだぁぁぁぁ (10月11日 21時) (レス) @page18 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - とても面白いです!これからも頑張ってください、応援してます!*\(`•ω•´)/* (2021年12月30日 12時) (レス) id: bdd88dda29 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳴々 | 作成日時:2021年9月15日 0時