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ドサドサドサッと嫌がらせのような音をたてながら目の前に積まれる書類、もはや壁のようになったソレの奥から聞こえる長い溜め息、どんよりと曇った鼠色の空。
なんという憂鬱三点セット、世界は私に厳しすぎるのではないか。
「……踊りが上手なのは認めますがそれとこれは別です。これは今日の分です、政務官の仕事量に比べたらこんなの雀の涙ですからしっかりこなすように。」
『一々喧嘩腰なの本当になんなんですか、黙って渡してくださいよ。私が仕事をやらなかったことなんて無いですよね?』
いつも眉間に皺が寄っている彼だが今日はいつにも増して機嫌が悪そうだ。私関連のことで王様に怒られたりしたのかな、“文官に舞踊スキルは要らん”とかで。まぁごもっともな指摘なんだけどね、踊れないよりは踊れた方が良いでしょ。
食い入るように私の躍りを見ていた官も結構居たし、今夜は商館も大賑わいだろう。今のうちに商人たちに準備をさせるため、つい先程伝達係として部下を3人商館に向かわせたばかりだ。
私は国営商館管理官として為すべきことを為したまでだ。商館が賑わえば賑わうほど外国人からの印象も良くなるしね。
『今日は仕事を早めに終わらせますから取りに来ていただかなくて結構です。出勤ついでに政務室まで私が持っていきますので。』
「出勤?……ああ成る程。分かりました。」
流石は政務官様、理解が早くて助かる。
夜の商館では管理官が有事に備えて武装で徘徊しなくてはいけない。私は元々書類仕事が他人より多いので見回り役に回ることは少ないが、宴や祭り等人数が多い夜の場合は私が自ら出ていくのだ。
金属器や眷属器を持った人が悪酔いして暴れまわったらそれこそ一般人が死にかねない。私は攻略者や攻略者の古くからの部下では無いものの、魔力操作を習得しているため彼らを落ち着かせるくらいはできるのだ。
そうと決まっては早速仕事に取りかかろう、と万年筆を手に取る。ジャーファル様は私が集中し出したのを見てからゆっくりその場を離れた。
『あ、ジャーファル様。』
「なんですか?」
『踊り、褒めてくれてありがとうございます。』
彼はバツが悪そうに頬を掻いたのち、「いえ」と一言残して立ち去った。
なるほどな、真っ直ぐな感謝に弱いタイプか。道理で普段の私とかいうひねくれ者に厳しい訳だわ。
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あまね(プロフ) - すきだぁぁぁぁ (10月11日 21時) (レス) @page18 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - とても面白いです!これからも頑張ってください、応援してます!*\(`•ω•´)/* (2021年12月30日 12時) (レス) id: bdd88dda29 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳴々 | 作成日時:2021年9月15日 0時