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__そこからは凄かった。
あれよあれよと言う間に官たちと八人将が全員集合、文官の衆議に八人将がなんで居るんだと大困惑する私の前に平然と現れる王様、大困惑を超えて無の境地に辿り着く私。
情緒がジェットコースターレベルでイカれてしまった私を置いて勝手に進められる衆議、正直内容は1割も覚えていないしその1割も王様の挨拶とロイヤルジョークくらいだ。
終始お口あんぐりだった私だが、王様の「それじゃあ最後に」の言葉でなんとか正気を取り戻した。最後の挨拶くらいはしっかりしなくては、と背筋を伸ばす。
「__それじゃあ最後に彼女の紹介をして終わろう。ジャーファル直属の部下であり国営商館管理官最高責任者のA。国営商館が栄えているのは間違いなく彼女のおかげだ。こう見えても元武官だから男性諸君は迂闊に手を出さないように、って痛!」
「余計なことを言わないでくださいよシン。A、皆に自己紹介と挨拶をしなさい。」
『え?』
__まさか自分にターンが巡って来るとは思っていなかった私はわりとデカめのよく響く声で言ってしまったのだ。え?と……。
そのあと皆の前で何を話したか、記憶がいまいち残っていない。多分ロクなこと話してないと思う、そんな気がする。
__ただ、爆弾は仕掛けてきた。
私たち国営商館管理官が“特別”であることを証明する、私にしかできないことを。正直緊張で足はガクガクだったが、なんとかやりきったつもりだ。
ーーーーー
「しっかしアイツ面白えヤツだな〜、王サマが大分前に連れてきた女ってのは知ってたけどよ。大衆の前でいきなり踊り出す文官なんて世界中のどこ探してもいないぜ。」
皆が居なくなった大広間には先程の熱に浮かされたような空気が充満していた。あの馬鹿、何も踊ることなんか無かったじゃないか。思わず見惚れたのは事実だが、それはそれとして。
『__熱い手拍子、ありがとうございました。続きが見たい方はどうぞ商館まで、踊り子たちが皆様を待っています。
私たち管理官は娯楽の官。いついかなる時も皆様を笑顔に、それだけでございます__』
「商売上手、だな。」
「……ですね。あなたに似て小賢しいです。」
そうか?と笑うシン、その目は確かに楽しそうに細められていて、まるで新しい宝の地図を見つけたかのような輝きを湛えていた。
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あまね(プロフ) - すきだぁぁぁぁ (10月11日 21時) (レス) @page18 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - とても面白いです!これからも頑張ってください、応援してます!*\(`•ω•´)/* (2021年12月30日 12時) (レス) id: bdd88dda29 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳴々 | 作成日時:2021年9月15日 0時