キミが残してくれたモノ (ページ5)

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「ママかも！」

「だねー。はいはい、すぐ出ますよー。」

パパが受話器を取って、いつものようにのほほんと話しだした。

「はーい、どちら様ですかー？こちら玉森ですー………え。」

それきりパパの声が聞こえなくなった。

不審に思った私は、パパに近づいて顔を覗き込んだ。

「パパ……？」

目が合うこともなく、まるで私の声は届いていないようだった。

「………はい、わかりました。すぐに行きます。」

そう告げると、パパは静かに受話器を置いた。

その刹那、私のことを力いっぱい抱きしめてきて、震える声でパパが言った。

「Aちゃん……ママが………」

「え？ママ、なんだって？」

「ママが……事故に遭って……」

「え……事、故……？」

それはママからの電話ではなく、警察からの電話だった。

・

事故。

お酒を飲んで運転していた男のトラックに轢かれて、即死だったらしい。

だけどパパはまだ幼い私にそんな残酷なことを言えるわけもなく、事故に遭って病院にいるとだけ伝えた。

今日はママのお誕生日で、3人でお祝いする日だったんだよ？

美容院でカラーとカットをして、更に綺麗なママになって帰ってくるんじゃなかったの？

ケーキに26の数字のロウソクを立てて、バースディーソングを歌うんじゃないの？

「ママ……」

心臓が破裂しそうなくらい音を立てて動揺するあまり徐々に呼吸が苦しくなっていた。

ハァ、ハァ、ハァ……

「Aちゃん……ゆっくり大きく呼吸してごらん？パパがいるから大丈夫だよ。」

そう言いながら、パパは私の背中を優しく撫で続けてくれた。

その手が微かに震えていたことだけは、今でも鮮明に覚えている。

その後のことは、はっきりとは覚えていない。

とにかく病院や警察など全てのことをパパが対応してくれたんだと思う。