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一頻り海ではしゃいだAは、海水から上がろうと戻ってくる。
そんなAに向け、零は手を差し出した。
「ほれ、足下が暗くよく見えんじゃろう。
我輩に掴まるがよい」
『うん、ありがとう』
そう言って零の大きな手を掴んだ瞬間、Aは素足で思いきり巻き貝を踏んづけてしまい、足裏から予期しない痛みを感じた。
『痛っ！？』
「なっ！うわっ……！？」
痛みで反射的に零の腕を引っ張ってしまったA。
支えていた零ごと、二人は海で転んでしまい、二人してびしょ濡れになってしまった。
『いたたた……ご、ごめんね零ちゃん』
「ったく……怪我はねぇか？」
『う、うん……』
零を海に引きずり込んだ形になったせいか、零とAの距離は紙一枚ほどの距離。
海水を被り髪の毛から垂れる雫や肌を伝う水が月明かりに反射して色っぽく映る。
それはお互いが昔から知る幼なじみではないと思う程に綺麗だった。
ようやく二人の異様に近い距離感に違和感を感じた二人は、二人して顔を逸らして即座に離れた。
「あー……その、早くあがれよ。風邪引くぞ」
零は焦っていつもの老人口調も砕け素の話し方に戻っている。
そんな零の焦りが伝わったのか、Aはおかしくなって笑みを浮かべる。
「なにがおかしいんじゃ。ほれ、今度は足下に気を付けるんじゃぞ」
『は〜い。ふふっ』
笑い出したAを見て零の口調も元に戻り、Aは零に海から引き上げてもらった。
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作者名：もぶピ
| 作成日時：2023年1月6日 13時
