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「……」
夢の中、英智は心地良い空間に包まれているような感覚を味わっていた。
落ち着く声、匂いにこの眠りから覚めたくないと思うほどだ。
しかし、夏の夜空の下、不安定な体勢のまま深い眠りにつくことなどできず、目は冴えてしまう。
「ん……あぁ、僕は眠ってしまっていたのか……
疲れてたのかな。渉、僕は一体どれだけ眠って＿＿＿＿＿＿」
そこで英智は気付く、視界に移る細い足と見覚えのある赤紫色の髪。
一瞬、日々樹が悪ふざけで変装しているのかと錯覚するが、どこか安心感のある包容力を感じ、本人であると理解した。
そして理解と同時に驚いて頭を上げてしまった。
『ぅわっ……あ、起きた？』
「今、「うわっ」って言ったよね？」
『寝ぼけてるんじゃない？』
恍けた顔でそう言えば、英智もそれ以上は追求する気も失せる。
それ以前に、なぜ日々樹に寄りかかって寝てしまった自分が、こうして元カノの肩を借りて寝ているのか未だ不思議な感覚だった。
「どうしてここに？」
『日々樹くんに君のことを見てるように言われただけ。
具合はどう？』
「う、うん。少し疲れているけど、まだ大丈夫みたいだ」
『そ。じゃあ私はもう戻るから。零ちゃん今頃血眼になって探してないといいけど……』
そう言いながらその場を立ち去ろうと立った瞬間、英智は咄嗟に腕を掴んでAを引き留めた。
『……なに？』
「なぜか、君を行かせたらダメな気がしたんだ……」
そう呟く英智は、何かに気付いたかのような困惑顔でAを見つめる。
その表情に、Aは英智が何を言いだそうとしているのかわかってしまった。
「A……っ、僕は、君のことを＿＿＿＿＿」
『！』
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作者名：もぶピ
| 作成日時：2022年10月2日 23時
