189 ページ39
木陰で眠りこけていたら、空はすっかり紺色に染まっていて、まだ開ききっていない目を無理やり開けようとした。
その時にAはふと、自分の身体が浮いているような感覚に気付く。
月明かりの逆行に照らされてハッキリとは見えなかったが、どうやら誰かに運ばれている最中らしい。
微かに香る匂いと、不思議な安心・安定感で、それが誰なのかは見ずともわかった。
『……降ろして、恥ずかしい』
「おや、起こしてしまったかのう?なるべく揺らさぬように運んでいたつもりじゃったんじゃが」
目を覚ましたことでようやく地に足をつくことができたA。
目線を少し上に向けると、物足りなそうな顔で見つめる零と目が合う。
「別にお家まで運ぶこともできたというのに」
『私が!恥ずかしいの!』
スカートやシャツの乱れを正しながら帰路を歩いていると、祭り囃子の音色がどこからか聞こえてくる。
『お祭りでもしてるのかな?』
「寄っていくか?」
『う〜ん……あれ?あそこにいるのって……』
「ん?」
Aの目線の先を見てみれば、祭の会場近くで楽しそうに歩いている真緒と『流星隊』の1年生、仙石忍がいた。
305人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もぶピ | 作成日時:2022年10月2日 23時