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『もうやだぁ〜……お化け屋敷なんて入りたくなかったのに……』
「葵くんたちにも困ったものじゃのう。
じゃが許してやっておくれ。あの子らも我輩らに楽しんでもらいたいと思ったゆえの行動じゃ」
『わかってるよ、あの子たちを責めたりなんかしない。
悪いのは「お化け屋敷」という存在を生みだした先人よ』
「存在自体を否定か」
お化け屋敷を出た後、休憩のため外に出て一息吐くA。
空は夕陽に染まって赤くなり、「学院祭」の終わりが近づいていることを知らせる。
あれほど一般客でごった返していた校内も広々と歩けるほどになり、野外ステージでライブをしていたアイドルたちの歌声も減り、屋台も店じまいの準備にとりかかっていた。
その光景を見ながら、零は満足げに笑みを浮かべていた。
『楽しかった?』
「あぁ。今日ほど青春を謳歌した日はない。
それもすべて、Aのおかげじゃな」
『……本当なら、もう少し長い時間一緒に遊べたはずなのに』
まだ仕事を優先して零の約束をすっぽかそうとしたことを気にしている様子のA。
零はそんなこともお構いなしに、Aに微笑みかけた。
「おぬしが今、我輩のためにここにいる……
その事実だけで天にも昇る心地じゃよ」
『だから大袈裟だって……ふふっ』
すると、零はAの肩を掴み、真っ直ぐな瞳でAを見つめる。
「A、俺……」
『?』
「_______」
零が何かを言いかけたその時、「学院祭」の終わりを告げるアナウンスが流れ、零の言葉はかき消された。
『え、なに?何か言った?』
「……いや、なんでもない。
さて、『UNDEAD』の皆のもとへ戻るとするかのう」
『あ、片付け手伝おうか?』
「なら、食器を洗うのを手伝ってはくれんか?」
『もちろん♪』
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作者名:もぶピ | 作成日時:2022年10月2日 23時