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その日の放課後、『Trickstar』が零の計らいでレッスン室を借りられたらしく、今日から1週間はそこで練習することになっている。
Aは職員室での事務作業を終え、校内を散策がてら小腹が空いたので食堂へ向かっていた。
その途中、弟の真緒と鉢合わせした。
『あ、真緒〜』
「ゲッ、姉貴」
『今、お姉ちゃんに向かって「ゲッ」って言った……?』
「い、言ってませんよ〜?」
真緒は「やべっ」と小声で呟き、すぐに笑顔で誤魔化す。
『真緒がこんな反抗的な子になるなんて……昔はあんなにお姉ちゃんッ子だったくせに!』
「いつの話してんだよ。
つーか、こんなとこで何してるわけ?生徒会の先輩に見つかっても知らねぇぞ?」
Aはこの1週間、蓮見を初めとする零以外の知り合いに会わないようにしながら過ごしていた。
その理由はとても単純で、「なんとなく気まずい」からだそうだ。
『こっちの仕事が片付いたから食堂で何か食べようかなって思っただけだもん』
「いや、俺に言われても知らねぇけど」
『真緒が聞いたくせに〜!』
頬を膨らませながら怒る姉と、「はいはい」と慣れた様子で対応する弟。
もはやどちらが年上なのかわからない。
「とりあえず、俺も食堂行くところだし、早く行こうぜ。
転校生のことも心配だし」
『え、なになに?真緒、あんずちゃんと会ったの?
可愛い子だったでしょ?』
「なんでそんなウキウキしてんだよ?
ほんと、この姉は……」
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作者名:もぶピ | 作成日時:2022年9月5日 1時