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天祥院のこれまでの目論見が零によって明かされ、不思議と頭の中は澄み渡っていた。
なぜ自分のような平凡な女に近づき、優しい言葉をかけ、今まで遠回しな言葉で利用してきたのか。
真実を知ってしまえば、もう何も思い残すことなどなかった。
だから、Aは笑顔で天祥院に近づいた。
「A……?」
「A、こんなところにいたのか。
さっきいきなり電話を切られたから心配していたんだよ?」
天祥院はいつも通りにAに話しかける。
機嫌が良さそうに微笑んでいるAを見て、先ほどの話は聞かれていないとでも思っているようだった。
「さぁ、こっちにおいで。明日のことでどんな演出を加えればいいか、君の意見が聞きたいんだ」
『英智くん』
「ん?どうかしたかい?」
『別れよっか』
その言葉を発した瞬間、天祥院の表情は抜け落ちた。
「……聞いてたんだね、今の話を」
『ごめんね。でも、英智くんには私以外にも傍にいてくれる人はたくさんいるでしょ?』
Aはそう言いながら青葉の方に一瞬目を向けた。
『英智くんが成し遂げた改革は、実際この学院を良い方向に導いてると思う。
だから、これ以上血生臭い抗争に巻き込まないで。
私には、皇帝の膝元で喉を鳴らしながら媚びを売って生きるよりも、優しい怪物さんたちと大変だけど毎日が充実した日々を送る方が、楽しいと思うから』
Aはそう言って零の横に並んだ。
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作者名:もぶピ | 作成日時:2022年9月1日 21時