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その後、資料を読み進めていくと、藍良が突然驚きの声をあげた。
「うっわ、何これ」
『どうしました?』
「これ見てよっ」
藍良に見せてもらった資料には、『劣等生は可及的速やかに荷物をまとめ、こちらの指示する星奏館の一室に転居し、【MDM】終了時まで四人で共同生活をすべし』と記載されていた。
『星奏館……近くにある、真新しい建物のことですね。
ESの指示なら、その通りにするべきでしょうけど……』
「おれは自宅に大事な宝物がいっぱいあるから、あんまり離れたくなかったんだけどなぁ……
そんなことを言ってられる状況じゃないしねェ……」
「トホホ」と藍良は机に突っ伏す。
「フム。住処を与えられるのはすごく助かるよ。
僕はこれまで行き場がなくて公園などで寝泊まりしていたから」
「何気にスゴいことを言うね、ヒロくん。
家出でもしてきたの……?」
「ううん。いちおう兄さんを連れ戻すという名目で実家の許可を取ったし、離縁されてもいないよ」
『お兄さんを、連れ戻す?』
Aは一彩の言葉に思わず反応してしまう。
「ウム。早く兄さんを連れ戻して、故郷に帰るのが僕に与えられた使命なんだよ」
『……聞いてないです、そんなこと』
Aは少し俯き、小さく呟いた。
「ん?何か言ったかなA?声が小さくて聞き取れなかったよ」
『……何でもないですよ』
そう言ったAはどこか素っ気ない態度だった。
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作者名:もぶピ | 作成日時:2021年12月13日 21時