先輩、好きですけど？【瀬名泉】

episode 18 ページ19

.



音楽番組当日。

この日は朝から大忙しだった。

早朝に家を出て、まずは専属モデルをしていら雑誌の撮影。終わったらすぐに千葉へ移動。ショッピングモールで行われたファッションイベントに参加してきた。

そのあとは、東京に戻ってcmの撮影。その後にお昼を食べながら雑誌の新しい企画の会議。

午後3時頃に音楽番組の収録現場に入った。

『おはようございます……、』

そこに来て一番に目に入ったのは、

『あ、月永さん。』
「ああ、この前の……霜月さん、でしたっけ？」

泉くんのお友達で、この前バラエティーで共演した、月永さん。

彼は、どこから見ても完璧な営業スマイルで私に応答している。

『先日はどうも。とても楽しい収録でした。』
「いえ、こちらこそ。おれも楽しませてもらいましたし、とてもいい刺激を受けました。」

「あんた誰よ、王さま……。」
『瀬名くん！』

そこにいたのは、泉くんだった。

「どうも、先輩。お疲れさまです。」
『どうしてここにいるの？急遽出演することになったとか？』

私がそう問いかけると、泉くんは少し困ったように笑った。珍しい。

「いや、俺は出演者じゃありませんよ。こいつを見かけたんで、ついてきたら此処についた、って感じてす。」
「セナ、おれのこと大好きだもんな。」

月永さんのその一言に、気持ち悪いだの、猫かぶりだの言ってる泉くん。

『二人はすごく仲がいいね！』

見てると微笑ましくなって、ついつい笑ってしまう。

「仲がいいんじゃないです。これは一方的な愛だ。」
「セナからおれに対する？」
「んなわけないでしょ。だったらおれたちの間に愛なんて微塵も存在しないから。」

言い争っている二人をおいて、私はそっとその場を去った。

別に、彼を避けてるわけじゃないけど。

面と向かって話すのは、泉くんに失礼な気がするし。

私が月永さんに嫌われているのは、わかりきったことだしね。



.

episode 19→←episode 17

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す