理想的な演説です ページ8
『真面目』って言葉は大嫌い。期限とか条件とか目標とか、それをきっちり守ってるだけなのに、周りの人は自分ができない言い訳のように「Aちゃんは真面目だね」って言う。
期限が近づいてきたら焦るし、条件を提示されたらそれをクリアしようと必死で食らいつく。
私にとってはそれは当たり前で、本能のようなものなのに、まるで偉いことのように言われて。
私は別にもっと頑張っていることもあるのに、それも評価してもらいたいのに。表面だけの努力を褒められて、私の心は荒んでいく。
じゃあもういいか、どうせ認められないのなら、当たり前のことをしているだけで褒められるなら、これ以上上を目指す必要はどこにある?
再びくさくさした気持ちで砂利を蹴飛ばす。じゃらじゃら、といくつかが転がって、灰色のコンクリートと緑のラインの境目でぴたりと止まった。
「……そういうことじゃないんだよなー」
ころんがなんか言ってる。勝手に言ってろ。
「Aはなにをするにも、これは利益になる? とかどうしても必要なこと? とか、こうしたら嫌な気持ちになるかなとか今はこうするべきだなとか、しっかり考えてから行動するでしょ? 僕は結構直感で行動しちゃうからさ、そういうことができる人ってほんとすごいと思うんだよね、それが正しいことかはひとまず置いといて」
「……自分と違うから?」
「うん。自分と違うものを持ってる人って、惹かれるでしょ?」
それが当然というように、相変わらずなんも考えてないような顔でそう答える。でも意外とその頭は、私とは違うものがいっぱい詰まってて、フル稼働してるのかもしれない。
彼を見つめる。綺麗な目。悪戯っぽく微笑む唇。その唇がまた開いて、言葉を紡ぎ出した。
「それにね、人って自分と真逆のタイプの異性を好きになるんだって。自分とその人との赤ちゃんができた時に、遺伝子が違うタイプの方が」
「黙れ」
……………
更新遅くてごめんなさい……!
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作者名:紬 | 作成日時:2020年8月3日 13時